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ヤツの前科を脳内で列挙した私は、警戒しながら箱を受け取った。
「北井彰くんって、確か高校の同級生だった子よね? ちょっとやんちゃの」
3年間同じクラスだったこともあって、北井の名が家の中で話題にのぼることが間々あったので、母の記憶に強く残っているようだった。
「ちょっとっていうか、けっこうやんちゃなヤツだよ」
「今でも連絡とり合ったりしているの?」
改めて送り状を覗き込んできた母は顔をあげて、興味ありそうな目つきで私の顔を見ている。
「……別に何にも連絡とかないし、してない」
実は高校の卒業式の日に、私は北井から告白されていた。やんちゃなヤツだが、嫌いなタイプではなかった。もしかして現役で大学に合格していたら、OKサインを出していたかもしれないくらいだった。でも、浪人生活に入るのだから、男女交際になど現を抜かしている場合ではなかった。だから私はその申し出を断っていたのだ。
「あけてみたら?」
届いた箱は横幅が30センチ、縦が20センチ、高さが10センチ程度のサイズで、大きさの割に重さはそれほどなかった。何が入っているのか、まるで想像がつかなかっただけに、特に母の前であけるのには抵抗があった。
「いいよ、あとで。とりあえずご飯食べる」
私はそう言って母の言葉をさらっとはねのけた。
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