「うわさのくすり」奇妙で不思議な5分ショートショート短編 vol.1

第３話

人々は伝染病の存在自体に、疑問をいだきはじめた。

もしやよからぬ輩が、金もうけのために、伝染病のうわさを流し、偽の錠剤を売っていたのではないか。そうだとしたら、ひどい詐欺だ。

世間の空気をかぎつけ、新聞やテレビは「重大な詐欺事件だ！犯人をさがせ！」と連日報道した。

そして、とうとう警察が捜査にのりだした。

捜索隊が錠剤の瓶に記載されている場所にたどり着くと、そこはうっそうとした森だった。そして木々の中にかくれるように、無機質な建物がたたずんでいた。

大きくはないが、どこか病院のような、研究所のような雰囲気。人工物だとはっきりわかる直線的なデザインは、自然が広がる山奥には少々違和感がある。

「ごめんください。警察ですが、誰かいませんか」

大きな声で呼んでみる。返事はない。あたりは、しんとしている。入り口らしきものは見あたらない。

無造作においしげる植物をかき分け、分厚いコンクリートでかこわれた建物のまわりを壁づたいにすすんでいく。二回ほど角を曲がると、やっと銀色のドアがみつかった。鍵はかかっていない。

慎重に施設内に足をふみいれる。そこには、まっ白な空間が、広がっていた。がらんとしていて、ひとけがない。人はおろか菌ひとつみつからなさそうである。

「謎の穴を発見しました」

先頭の隊員がさけんだ。

その場に全員が駆けつけると、ぽっかり丸い穴があいていた。穴の中には、はしごがかけられ、深い暗闇へとつづいている。