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第5話
むかしむかし、ジャングルの奥に小さな村があった。
ある日、村人のひとりが森へいくと、しげみのかげに赤い猿が倒れているのをみつけた。だいぶ弱っているが、まだ死んでいない。
村人は、猿を看病しようとつれてかえったが、間もなく死んでしまった。
それから数年後、猿のことなど忘れていた頃、その村に赤鬼があらわれた。
そして赤鬼は、村に火をはなち、村人もろともすべて焼きはらってしまったという。
「どこかで聞いたことがあるような、ないような昔話だな」
刑事は困惑しながら言った。男は話を続ける。
「わたしはかつて、新薬の開発をしている研究者でした。そして、調査のためにジャングルの奥地へ滞在していました。わたしは、そこでこの話をききました」
ここまでの話を聞き、刑事は最初に感じた自分の勘に納得した。なるほど、この男の雰囲気がどこか普通の犯罪者とちがっていたのは、まじめな研究者だったためか。
「刑事さんはこの話、本当だと思いますか」
「うーむ、赤鬼とは。そんなもの、いるはずもない」
「それが、いたのです」
「そんな、まさか」
刑事はごくりとつばをのんだ。
「わたしは、このうわさに興味をもち、さらに調査をつづけました。そこでいろいろなことがわかってきたのです」
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