【午前8時45分】

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【午前8時45分】

朝から、早起き。 このノリは、 20歳の成人式以来だ。 「おー!静流(しずる) すっごい、べっぴんさん!」 運転手 兼 マネージャー役を 承ってくれた黄助(おうすけ)が、新聞読むのをやめて、 褒めてくれる。 担当のコンシェルジュの 花さんも、にこやかだ。 「ほんと、お美しいですよ。」 「ありがとうございます。」 ペコりと頭を下げると、 ハラりと、 固めたはずの、 前髪が、落ちてきた。 「あ。ちょっと待って。」 美容師の由紀さんが、 手元のくしで、再度セットする。 「ティアラとベール着けるまで、 ちょっと揺れると落ちるからね」 と、フォロー。 「花嫁は、大変だ。」 黄助が新聞に目を戻しながら、 時計を確認した。 「 黄助、兄ちゃんたちは?」 「え、まだ、早いでしょ?」 「だって、 9時に来るって言ってた。」 「まだ、15分前だぜ。」 「おふたりって、並ぶとほんと、 よく似てる。」 花さんが、 私と 黄助をじっと見つめるので、 2人で目を合わせて 「双子なんで。」 と言って笑った。 私には、兄が4人いる。 黄助は、私と双子で生まれた兄。 あと別に 3人の兄と父がいて、 つつましやかに、 男家族の中で育ってきた。 「父ちゃん、9時に来る?」 「多分。」 なんて会話を続けてたら、 バタンと、控え室のドアが 開いた。 「兄ちゃん、 ノックぐらいして?」 「あー、ごめん、ごめん!」 「赤兄(せきにい)、早いね」 「めっちゃ早起きした!」 「迷わなかった?」 「ナビあれば、余裕?!」 午前8時45分に現れたのは、 3番目の 赤夜(せきや)兄さんだった。
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