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赤兄が、 黄助の前の椅子に ネクタイを緩めながら座る。 「へー、静流、きれいじゃん」 「化けたよね?」 「うるさい! 黄助!」 花さんの勧めてくれた椅子に 座りながら、2人を見た。 口は悪いけど、 2人が、やさしく私を見てるのは わかってる。 飲みもののオーダーを確認して 花さんと由紀さんが、 部屋を出るタイミングに 「そういえば、親父、 ちょっと遅れるって。」 と、赤兄がスマホいじりながら 言った。 「まじで?」 「どれくらい?」 「いや、大丈夫じゃね? 式、10時半だろ?」 「そうだけど。」 「ま、ちゃんと来るだろ?」 と、赤兄が鼻で笑いながら 軽く流そうとした。 ・・そうだけどさ。 ちょっと鏡に写る自分を見た。 鏡越しに黄助と目が合う。 さすが、双子。 なんか、通じ合えるんだよね。 「思い出した?」 「うん、思い出したよ。」 黄助が笑うから、 赤兄が私たちを見る。 「また、双子の伝心かよー!」 「だって赤兄、父ちゃん、 前科アリだぜ。」 「そうそう。前科アリ。」 双子で笑う。 赤兄は、 しばらく、なんじゃ、それは? みたいな顔をしてたけど、 ハッとして、 天井を仰いで、 ゲラゲラ笑いだした。 「あれか、あれ、静流が、 高二の時な?!」 「それそれ!!」 レースのカーテンから透ける 温かい光と一緒に 懐かしい思い出の空気が 室内を満たし始めた。
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