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まだセミの鳴き声が、夏の気怠さと混じりあわない時間帯に、恵一は家を出た。太陽に照らされて、心なしか輪郭線がはっきりしたように映る、見慣れた道を歩いていく。
ふと、自分の少し先に、同じ学校と思しき学生が歩いているのを恵一は見つけた。恵一の足が止まる。この学生に続いて、このまま道なりに行けば学校に着く。だが恵一は、進行方向に視線を据えながらも、頭の中では、別の場所を思い浮かべていた。そして、ほんの束の間、立ち止まっていた恵一だが、その場で方向転換をすると、通学路ではない路地へ入っていった。
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