夏の木漏れ日に

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 自分と同じかもしれない、と恵一は思った。だが、だからといって珍しいわけではない。事情は人それぞれだ。ただ、いつもと違う光景があって、一瞬目が引かれただけだ、そんなことを思いながら、再び本に視線を落とそうとしたその時、その子供が何かのボタンを押したのだろうか、自動販売機から機械音が流れた。 「うわぁぁ!」  その音に驚いた子供は思わずのけぞって―、ではなく、後ずさりはしたものの、頭を低くして両手を前にし、四つん這いの姿勢をとった。そしてその直後、子供のかぶっている帽子と、子供の腰辺りから何かが飛び出した。  それは、耳としっぽだった。
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