夏の木漏れ日に

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 機械音が収まっても、その子供は四つん這いの姿勢をとったまま、しばらく自動販売機を訝しげに見つめている。だが音がしなくなったことに警戒を緩めたのか、子供は頭を持ち上げ、両手を地面から離し、両足で立った。それと同時に、耳としっぽも、するすると姿を消していく。そして子供は、再び自動販売機を恐る恐る見つめながら、時折つついたりし始めた。    恵一はその一連の様子を、ただ茫然と見つめていた。いや、目を見張っていたという方が近いかもしれない。
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