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幼気な仔羊
従兄弟の洋太を預かっていたのは10年前。
真智子の叔父夫婦が急な海外出張に出た2週間の事だった。
夏休みだった洋太を連れて行く事が出来なかったのは、パスポートを用意していなかったから。
本当に急な出張だったようで、何故洋太の母親が8歳の子供を置いて出張に着いて行かなければならないのかも聞けないまま洋太を預かる事になったと真智子は記憶している。
真智子の叔父、洋太の父親は仕事が本当に忙しいようで、正月や夏休みであっても実家に顔を出すという事をしなかった。
兄に当たる真智子の父親でさえ、預けられた洋太と会うのは2回目か3回目だったと聞いている。
叔父は洋太を家へ連れて来た後すぐに帰って行ったので、洋太は独りぼっちで寂しそうだった。
近所を散歩しようと声を掛けても、お菓子を買いに行こうと誘っても、洋太は暗い顔でボーッとしているだけだった。
食事の際は黙って黙々と食べ、お風呂は1人で入り、寝るまでの時間はテレビの前でボーッとする。
祖母が突然両親に置いて行かれて寂しいのだろうと、一緒に寝ようと声を掛けても洋太は動かなかった。
心配した祖母が、真智子に一緒に寝るよう誘ってやってくれと頼んで来た。
当時女子高に通っていた真智子。年下の男の子の扱いは分からなかったが、さすがに落ち込んでいる洋太の事が心配だった。
真智子の両親も、あまり面識のない洋太の扱いにどうしたらいいのか戸惑っている様子だったのもあり、洋太を半ば無理矢理自室へと連れて行ったのだ。
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