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最近、キレイになった?シリーズ
制作:kaze to kumo club
最近、キレイになった?
シリーズ2
--鏡の話--
昔々、ある山国のお城に……
自分のサメ肌に悩みを持つ……20歳のお姫様がおりました。
名前を……白肌姫(しろはだひめ)……と言い、それは、それは……気難しい性格の女性でした。
今日も、今日とて、自分を写し出す魔法の鏡に問い始めます。
「鏡よ、鏡よ、鏡さん! この世で一番キレイにな肌をした娘は……
だあれ……?」
にわかに鏡の中に現れる……ハンサムな男の精霊が語り出します。
「知るかよ、そんな事! お前でない事だけは……確かだぜ!」
毒つく鏡の精霊が笑います。
思わず、近くにあった椅子を振り上げ、真っ赤な顔をした姫様は、鏡を破ろうと駆け寄ります。
それを見て……いけないとばかりに……背後から姫を止める次女のエリカ、12歳が叫びました。
「ダメですよ、姫様ー!」
「ええーい、離せ、エリカ! 今日と言う今日は、この忌まわしき鏡を、
この手で成敗してくれるわ! 離せ、離せ……!離せと言うに!?」
懸命に止める次女が……悲しげな表情で叫びます。
「いけません、姫様! その鏡は高価な上、ローンがまだ終わっておりません。くれぐれも壊さぬようにと……財務大臣様に言われておりますので……! ご辛抱を……!!」
「ええ〜い、クソ!」
姫は怒りを押さえます。
次女のあまりの怪力ぶりに、成す術のない姫は一息つき、我に返りました。
「コホン! まあ〜エリカがそこまで申すならば……今回は大目に見てあげるわ!」
「あっ、ありがとうございます。姫様」
そっと、姫の背後に戻り移る……エリカはホッとします。
いささか疲れた姫は、投げかけた椅子に座り、ドレスの裾を整え始めます。
そして、不安げにつぶやき、次女に……愚痴をこぼし始めました。
「けどね……エリカ……。私は本当に困っているのよ この……大人ニキビの問題と、サメ肌を解決したくて……ねえ……」
よく見ると……普段は前髪に隠された……ひたいには……大きなニキビが3つ……ありありと存在していて……せっかくの美貌を台無しにしていました。
前髪をかき上げて、鏡を見るたびに、姫は……ハア〜〜と……ため息を吐くばかりだったのです。
「年に一度の舞踏会まで……後2日。どうすれば……美肌美人となれるのかしら……? ねえ……エリカや……??」
不意に鏡が大声でしゃべり出します。
「無理に決まってんじゃねえか! アホ姫が! お前なんぞに、海国の王子様が振り向くもんかよ! バーカ!?」
再度、椅子を振り上げて、猛烈に……鏡を破ろうとする白肌姫は……激怒します。すぐに姫の前に走り寄り、頭を下げて、土下座するエリカが悲鳴のように言いました。
「ご辛抱を、姫様! そのニキビを治し、美肌になるためには……鏡の精霊の……ご加護が必要だと……森の魔女も申しておりました! ここはどうか、耐えてくださいませ!」
「ええーい、口惜しい! 何とかならんのか、エリカ……? この腐れ鏡めは……!?」
「なる訳ネェーだろうが〜、アホ姫が! てめェーのニキビなんぞ、治す気もねえーよ!」
甲高く鏡は笑い飛ばしました。
今度はテーブルの上に置いていた……大きな花瓶を持ち上げ……仁王立ちになる姫様が怒鳴ります。
「いい加減におしよ、クソ鏡! もう〜、お前なんかに頼まないわ! 粉々に砕いてやるから覚悟しなさーい!」
花瓶を投げつけようとする姫の手を、必死に飛び付いて、止めようと……次女が叫びます。
「待ってください、姫様! 最近、キレイになった……とお思いになりませんか……?」
「はあ〜? 何申すか、エリカ? 私のどこが、美肌なったと言うのか?」
辛そうな瞳で、振り返る白肌姫は、今にも泣きそうになります。
もはや、どうにもならない……自分の運命をも……呪うのかのように……??
「いえ……、姫様ではなく……鏡の事です!」
「はぁーあ……?」
姫の目が点となりました。
驚きのあまり、力が抜けて……大きな花瓶を落とします。
ハッと、その花瓶を……床に落ちる寸前で止めた次女が……ひたいの汗を拭いながら言いました。
「私……最近なって気がついたのですが……。その鏡……。前よりも……輝いて見えるんですよ、姫様……」
「輝いて……見える……? どこが……?」
「よく見て下さい、姫様! 中にいる精霊さんも……なんだか……若くありません……? 前よりよりも……ずっと……??」
「んんーん……? そう言えば……ここに来た時は……ジジイだったような気がするが……??」
目を凝らして見つめる姫に向かい、ふんぞり返る鏡の精霊が……悪態をつきます。
「バーカ! お前の目は節穴かよ? 今頃、気がつくとは……なあ……? このブスめ!」
「何よ、その言い草は……? あんた、本気で私の美貌や肌を……治す気あんの……?」
怒り狂う白肌姫が、ジタバタしながら……怒鳴りました。
すると……鏡が笑って語り出します。
「当たり前だろうが、このバカ! 俺様は、鏡の精霊様なんだぞ! お前をキレイにする事ぐらい……わけないさ! ガハハハ……!」
すかさず、機転をきかせた次女のエリカが叫びます。
「なら、やってみてくださいよ、鏡の精霊さん! 本当にできるかしら? 本当に……??」
ウフッと、はにかむ笑顔を見せて……エリカはウインクを……鏡の精霊に贈りました。
鏡の精霊は少し驚き、赤面すると……大声で言いました。
「いいとも、幼き娘よ! 我が力を見るがよい!!」
突然、鏡が凄まじい輝きを放ちました。白肌姫は驚きのあまりに、その場を動けず、強い光の渦に飲まれてしまいました。
やがて……気がついた姫は……ボォーとした表情で目覚めます。
気がつくと……そこは……自分の寝室だったのです。
ベッドの脇には、寝ずの看病をしていたエリカが眠っていました。
その手には、小さな手鏡を持って……。
「エリカ……エリカ……。 起きておくれ……。 いったい私は……どうなったの……?」
「うっ、うう〜ん……。 あっ……姫様……? 大丈夫ですか……?」
眠そう目をかきながら、心配そうにエリカが……姫の顔を覗き込みます。
「ええ、大丈夫よ。それより……エリカ。何があったの……? どうして私……ここに……?」
「姫様……。これを……」
にっこりと笑う次女のエリカは……白肌姫に……手鏡を渡しました。
キョトンとしてしまう姫を見て、エリカが言います。
「その鏡をみてください。姫様……」
「えっ……?」
ほがらかな笑みを讃える次女に勧められて、白肌姫は鏡を見つめました。
すると……どうでしょう……?
ひたいにあったニキビも……身体中の肌を……真白な……細やかなる美肌に
変わっているではありなせんか……?
白肌姫は……言葉もなく……しばらくは……その鏡を見つめ続けていました。
そうなのです。
あの魔法の鏡の精霊は……あまのじゃくな性格で、姫が怒れば怒るほど……自分が若返り……その魔力を蓄えていたのでした。
だから、逆に……次女エリカにおだてられた時……その力を見せつけたくなり……白肌姫の肌の悩みをも……解決させてしまったのでした。
小さな手鏡を胸にした白肌姫は……最後に……次女のエリカに言いました。
「ねえ、エリカ……。最近、キレイになった……? 私……??」
微笑む姫様と、エリカの微笑も……とても可愛く……幸せそうに見え……
以後……白肌姫の美しいさは……国中で……有名になりました……とさ!?
めでたし、めでたし……。
おしまい
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