最近、キレイになった?シリーズ

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最近、キレイになった?シリーズdfae567a-c245-46c6-b3e6-72bde8b1f699                    制作:kaze to kumo club 最近、キレイになった? シリーズ1 --夏の暑い月夜の出来事--  夏の暑い月夜。 仕事帰りの若い男、山崎道雄、23歳は家路を急いでいた。  早足に歩む彼の影を追う……不信な白いガウンの女。 フフフ……と付けたマスクが笑う。  彼のすぐ背後に近づき、低く、か細い声で……ささやき始めた。 「私……きれい……?」  振り返る若い男を驚かせようと、口元のマスクを外そうとする……女の白い指先が動く。 「大人ニキビが解決した? 君……?」 「はい?」  驚いた白いガウンの……女の手が止まる。  振り返った道雄は不満げな顔して、オドオドしてしまう女を見据えて言う。 「最近のホラー映画の世界はね。肌の状態まで、ハッキリと映し出すフルデジタルだからさ。見た目も十分に気を使わないといけないよ……君!」  右手を女の方へかざし、指先を左右に振る男は……真顔で語る。 「はあ……?」 「それだけではない! 肌の悩みが解決したのならば、次は……美肌にならなくてはいけないよ! 分かるかね、君……?」 「……はあ〜あ〜……」  途方に暮れる魔物の女は、返す言葉もない。 さらに道雄は得意げに、己れの弁術を披露する。 「恐怖はねえ……。女性を美しくするものだ! 滴る血も、腐った人肉も、闇の中で輝く君の……美しい白い肌にはかなわない!! それが、美的ホラーの真髄なのさ! 分かるかね 、君……??」 「…………」  眉を歪めつつも、何を言っているのか?……さっぱり分からない風の表情をする……魔物の女は……ひとり首を傾げてみる。  そんな女の姿を見るや……何かを思い立ったかのように……若い男は喋り出す。 「最近、キレイになった……?」 「ヘェ……??」  不意の言葉に赤面してしまう魔の女が……半歩退く。男がニヤリとする。 「ほらね。女の子は皆、そう〜言われて……美しくなるもなのさ! 分かるだろ、君!?」 指先を顔の横に置いて、左右に振る道雄が……ウインクして微笑む。 「………………」  大きく開かれた女の両目から……なぜか……涙が流れ落ちる。 そして、魔の女は気がつく。  考えてみれば……自分が……女の子扱いされたのは……もう遠い昔……!?  女であり、日々、美しくあろうと努力した時は……確かに……自分にもあったのだと……今更ながらに……知った瞬間だった。  山崎道雄は身をひるがえし、去りぎわに……最後の言葉を吐く。 「私、キレイと……問うのではなく、自ら美しくなりたいと願う心こそが……君を本当に美しくする秘訣ではないだろうか……? そうだろ、君……!?」 「…………………」  涙する女は……語る男の背中を見つめる。  わずかに横顔をさらす道雄の唇が……アデオス……と呟いた……ように見えた。  立ち去る山崎道雄の足跡が、夜空に響く。  見送る白い魔の女は……泣き止み、ポツリと言う。 「……ざけんじゃねえよ、クソガキが……! 私が……キレイに……決まってんだろうが……! バーカ!!」  マスクをマスクを取った口裂け女の口が……大きく裂けながら……笑った。 終わり --1p--
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