episode09.「君と私で、」

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冷えピタ事件の後、激しく動揺して頭にはてなマークばかり浮かべる私の前で、綺麗に口角を上げて笑みを深めるだけの瀬尾を眺めていたけれど。 色々と短時間で起こりすぎてキャパをオーバーした頭は、限界を迎えてやがて睡魔が襲ってきた。 瞳を開けているのも少しずつしんどくなって微睡に誘われていく。 _待って、私、この男に言いたいことがずっとある。 そう思うけど、熱い息を吐き出すことしかできなくて。 その瞬間そっと頬に指が触れて、 「…もうちょっと、待って。」 そう囁かれた気がしたけど、もしかしたら夢だったのかもしれない。 次に目を覚ました時には、あの気怠い雰囲気を纏う男はいなかった。 ゆっくり起き上がると、ベッド脇のナイトテーブルに書き置きのメモがスポーツドリンクと一緒に置いてあるのを見つける。 “鍵はポストの奥の方に入れておく お大事に“ 整った、少し右上がりの字。 短文のそれをそっと撫でるように触れた後、冷蔵庫へ向かった。
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