episode09.「君と私で、」

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「…こんな食べられないよ。」 その扉を開いた瞬間、ふ、とすぐ近くの空気だけを揺らすような小さな笑みが溢れた。 お菓子だけではなく、フルーツやゼリー、後は。 「…何で、塩辛も増えてるの。」 自分で買ったパックの隣に並んで鎮座するそれに、思わず突っ込んでしまった。 あんだけ文句言ってきたのに、自分もチョイス充分おっさんじゃん。 賄賂は、想像以上に豪華だった。 "ちゃんとお前が頑張ってるの見てるから、俺と、仲直りして。" そう、言ってくれた。 あの男の行動にも言動にも、私は振り回されて、翻弄され続けているけど。 自分の出来るところまで、仕事頑張ってみよう。 私が頑張る理由なんて、とても単純だから。 男が残した賄賂を眺めているとまたぽろっと涙が出てきた。 胸が焦がれて焦がれて、涙腺を刺激されるなんて、 恋そのものだと思う。 あの心地よい優しさに初めて触れた時から、それは増長していくばかりで。 仕事が落ち着いたら、もう1度瀬尾にチャットを送ろう。 結果がどうなっても。 素直に、ちゃんと、気持ちを伝えよう。 少しぬるくなった冷えピタに触れながら、そう決意した。
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