episode09.「君と私で、」

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「……瀬尾さんと、進展無さそうですね。」 可愛らしい声は、心臓をグサリと貫く。 「…進展どころか、最近喧嘩(?)してました…」 「子供ですか?」 「…仰るとおりで…、」 項垂れる私に、保城さんはクスクスと笑いを零す。 そして、クリクリの瞳で私と視線を合わせた。 「好きな人と喧嘩できるってなんですか?」 「へ?」 「…私の今までの恋愛の進め方では、考えられないですね。相手には良く見られたい、そればっかりでした。」 「……、」 確かにどういうことだろう。 付き合っても無いのに、先に仲直りを経験してしまった。 私の複雑な感情を押し出したような変な顔を見つめた保城さんは、今度は吹き出して笑う。 「枡川さん見てると、私の恋愛観が崩されて大変なんですよねほんと。」 「……なんかすいません。」 「私は性格良く無いので、ライバルが枡川さんでよかったとかは言わないですけど。 でも今度、枡川さんと飲みに行ってみたいかもしれないです。」 「……え、」 突然の誘いに驚嘆の声をあげた私に、やはり笑みを深めた彼女。 「その時は、枡川さんが奢ってくださると思いますけどね。」 保城さんの言葉は、私に向かっているようで、私には見えていない部分がある気がして、イマイチ理解が追いつかない。 そんな私を察したのか、保城さんは「いずれ分かります。」そう言って笑った。
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