prologue

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枡川(ますかわ) ちひろ 24歳。 オフィス家具メーカーに勤務する、社会人3年目。 新入社員として営業部に配属された頃は、それはもうミスも沢山したしトイレで隠れて泣くなんてこともよくあった。 お客さんに怒られると「初めてで分かんないんだから仕方ないだろー!」って言い訳したくて、だけどやっぱり上手く出来ない自分が悔しくて。 あれから3年、担当する案件も増えてきて独り立ちを漸く周囲にも認めてもらえるようになってきた。 「じゃあ亜子、午後もがんばろうね。」 「次はちゃんとリポートしてね、あいつはどんな手練手管で「ばいばーい!!」 同期で総務部の亜子は、同じオフィスだが席が離れている。 社員証でフロアのドアを解錠して、入り口で挨拶をした私に返してきた女の言葉がこれだ。本当にやめて!? クスクスと笑いながら去っていく亜子は完全に面白がっている。 「……くそう、」 「なに、柄悪。」 「っ、」 楽しそうに軽い足取りで去ってゆく彼女の後ろ姿をジトリ睨みながらそう言葉を漏らした私は、頭上からそんな言葉をかけられて身体を大きくびくつかせる。 「…せ、瀬尾(せお)。おつかれ。」 「…なんでこんな入り口で突っ立ってんの。はよ入れや。」 …柄悪いのはどっちだよ。
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