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01
今日の仕事は散々だった。
休みの同僚が今日までに取引先に送付しておかなければならなかった書類を忘れて会社に隠し持っていたらしく、先方からは電話口でチクチク責められ、肝心のその同僚は有休を使って旅行に行っているらしくすぐには帰って来られないと涙声で言われ、書類の在り処を聞くと個人のロッカーだと言う。
鍵は家の出勤用のカバンに入っていると言われ眩暈がした。
往復一時間半のアパートに行って鍵を回収してくるプランAを実行しようとその同僚に大家さんに連絡してもらったが、「こんな時代だから鍵を開けるのはちょっと…」と断られ、アパートから鍵を持ってくる案は消え。
会社のロッカーの鍵を壊すというプランBに移行すると、私は急いでホームセンターへ行って工具を買ってきて上司と共に鍵を壊す作業をした。
意外と時間がかかってしまって上司は日ごろの運動不足もあって息切れしていた。
書類の入った封筒を回収するとその足で先方の担当者と上司の元に向かう為に駐車場までダッシュした。手土産を買いに出てくれていた別の同僚がタイミング良く戻ってきてそのまま土産をバトンにリレーを続行。息切れしたままの上司を座席に押し込めてエンジンをかけた。こんなにアドレナリンを出してアクセルを踏み込んだのは初めてかもしれない、しみじみ思った。
何とか穏便に話を終わらせて、上司と共に社に戻った時にはたっぷり日が落ちていた。定時はとっくに過ぎていたが、流石に上司も残業として扱ってくれたので「本当にお疲れ様でした」と言って帰ろうとした。
しかし疲れ切った上司に「一杯だけ付き合ってくれ」と言われ無碍にも出来ず、華の金曜日に上司と二人で乾杯をするはめになった。けれど元来酒好きなので飲み始めてしまえばけっこう楽しんでしまい、十時ぐらいには終わった飲み会では飲み足らず、久々に一人でバーで飲み直してしまった。
金曜の夜なんてカップルばかりで、何となく寂しい気持ちになりつつ、それでもお酒で上機嫌なテンションは勝手に鼻歌を歌っている。
間もなく自分のマンションに着く。
そんなタイミングで見つけてしまった。
ゴミ捨て場ですやすや眠る、イケメンに。
普段だったら見なかった事にするところだけれど…お酒を飲んで楽しくなっていた私は、そのイケメンの肩を叩いて起こしてみた。
「もしもーし、風邪引いちゃうよー。寝るならベッドで寝ないー?」
私の問いかけにイケメンは「ううん…」と身動ぎした後、寝ぼけ眼でにっこり笑い「いいねぇ」と言って起き上がった。
本日イケメンお持ち帰り決定。
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