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あの後…由樹のいない部屋にすぐ帰る気にもならなくて、一時間程そのカフェで時間を潰してから帰ることにした。
玄関の鍵を開けると、室内はまだ暗かった。
帰ってないのか、と少しガッカリしてリビングの扉を開けると、急に伸びてきた腕に抱きすくめられ、床に押し倒される。
空き巣か暴漢が部屋に入り込んでいたのかと驚いて声を上げようとした瞬間、目元に布を巻かれ、何も見えなくなった。
暗闇の次は口にも布を突っ込まれ、叫び声も上げられなくなる。腕を頭上で一括りにされ、手首にも何かを巻かれて固定された。
そのまま胸を触られ、もう片方の手は下半身へと伸びてきた。下着の中で指が好き勝手に動く。そこまでされてやっと背筋がぞわりと総毛立った。
せめて自由の利く足だけでもバタバタと動かして抵抗したけれど、相手は意にも介していないようでそのまま行為を続けてきた。嫌なのに、怖いのに。自分の身体を守ろうと、下半身は勝手に濡れていく。クチュッとした音が自分から聞こえ、恐怖と羞恥で感情がごちゃ混ぜになっていた。
…もうダメだ。そう思った瞬間、涙が止め処なく溢れてきた。
布越しに漏れる自分の嗚咽の声を聞きながら、私はただ早く終われと願う。
もう何も抵抗が出来ず、ただされるがままになっていた。時折、相手の押し殺した吐息だけが室内に響く。
こんな事をしている割に、相手は割と冷静な人物なようで、ゴムを装着するような音が聞こえた。痕跡を残したら捕まってしまうような常習犯なのだろうか。私は涙も枯れつつあったが、せめてゴムを付けてもらえた事に安堵した。
一瞬、ほっと息を吐いた瞬間に一気に身体を貫かれた。
いくら濡れていたとはいえ、息を止める程の衝撃だった。あまりの勢いに呻きに近い声を出すと、最初の勢いは無くなりゆっくりとソレは動いた。ゆるゆると動かれると、今朝の熱を思い出してしまい、身体が熱くなってしまう。
感じちゃダメだと思う程、徐々に漏れる自分の吐息が甘くなっていくのに気付く。
それが悔しくて、また涙が零れた。
意地が悪いのか、反応を楽しんでいるのか。
ずっとゆっくりした動きで絶頂を迎えられないまま、胸の先端をいじられたり、耳に舌を差し込まれた。
それから何十分、何時間経ったのだろう。
時間の感覚が全く無かった。
私から相手のソレが抜かれた。ずっと弄ぶような動きをしていたから、相手も達してはいないはずなのに。
相手の身体が離れる気配がする。
また耳元まで相手の顔が近づいて来て、私は思わず身体を強張らせる。
そして呟きが聞こえた。
「…泉、こっそり恭平に会うなんて酷いよ」
その聞き覚えのあり過ぎる声に、思わず米神がピクリと動く。流れていた涙は一瞬で引っ込み…自由の効かない腕の代わりに、私は相手目掛けて思いっ切り頭突きをした。
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