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「ん……」
少し肌寒さを感じて意識が浮上すると、私は真っ暗な場所で目を覚ました。
椅子に座った形で眠っていたらしい。いや、眠らされていた、が正しいのか。
明かりが全くないので様子が分からないけれど、座っている椅子は随分上等な物みたいでふわふわと座り心地が良かった。
特に腕も足も拘束がされていない。
一体何の目的で私を?
眠っている間に何かされたのだろうかと自分の身体を触ると、着ている服が気を失う前と変わっている事に気付く。
ワンピース? …いや、これはドレス??
何故着替えているのだろうと困惑していると、急に室内に淡い光が灯った。
「ここって…」
私は言葉が出てこなかった。
目が覚めた場所は無人のチャペルで、私は美しい装飾のされたマーメイドラインの純白のドレスを着ていた。それはどう見てもウェディングドレスにしか見えない。
「何で…?」
私の言葉に反応するように、チャペルの扉が開く。
その先には人影があって、目を凝らした。
…まさか。
「泉…一人にしてごめんね」
「由樹…!!」
タキシードに身を包んだ由樹が、そこに立っていた。
少し照れたような表情で、彼はヴェールを手に持っている。
私の元までゆっくりと歩いてきた彼は、私の頭にそれを優しく被せる。
そしてそっと手を胸の辺りの位置で握られた。
「俺、これからもいっぱい泉のこと困らせるかもしれない。嫉妬深いし、驚かせるために泉に薬使って誘拐しちゃったし…仕事で海外行ったら暫く会えない時だってあると思う。それでも、俺…泉には傍に居て欲しいんだ…。俺が間違ったことしたら、また頭突きしてでも止めて欲しいし、叱って欲しい。泉を甘やかしたいって思う気持ちもあるし、甘えたいって思う時もある。
…俺、泉のこと考えると、何か気持ちが温かくなるんだ。
好きってこういうことなんだよね? だったら俺、泉が大好きだ」
握られた手には、いつの間にか指輪が嵌められていた。
綺麗なダイヤが光を反射している。
「泉…俺とずっと一緒にいて下さい」
真剣な顔をした由樹に、私は涙を流した。
誘拐して勝手に連れて来た事とか、叱りたい事はいっぱいあったけど。
涙が流れて言葉が出て来ない。
「…バカ。ずっと一緒に居るに決まってるでしょ。私達、夫婦なんだから」
それだけをやっと絞り出して、私達は無人のチャペルで深い口づけをした。
誓いのキスには随分長く、何度も角度を変えて口づけて…
やっと唇が離れた時には、私も由樹も熱に浮かされた顔になっていた。
由樹はドレス姿の私を抱き上げると、もう一度口づけた後に優しく微笑んだ。
「はぁ…泉が綺麗過ぎてもうムリ。今すぐ抱きたい…」
私の首元に顔を埋めて、本当に切なそうに言う由樹が可愛くて…私の身体も彼が欲しくなってしまった。抱かれたままチャペルを抜け、式場の外にある車に乗せられる。シートを倒され、由樹が私に被さってきた。
「よ、由樹…このままだとドレス汚しちゃう…!」
胸に手を伸ばしている由樹にそう言うと、彼は気にした様子もなく
「借り物じゃないから大丈夫」と言ってドレスの裾を捲った。
借り物じゃない?
…深く考えるのは怖かったので、そのまま与えられる刺激に身を任せることにした。久々に触れられると、それだけでゾクゾクと快感が生まれた。
由樹は時間をかけてほぐしてくれて、ドレスに愛液が垂れていくのが分かる。
彼がゆっくり進入してきて、一つになるのを実感した。
思わず涙が流れる。
「泉…好きな人とのセックスって、こんなに気持ちいいんだね…」
「うん…すごく気持ち良い…」
身体を繋げたまま、何度もキスを繰り返した。
「好き…好き…」由樹が呟く度に簡単に達してしまう身体は、もうきっと由樹無しでは生きていけない。
きっと私の方が、由樹を手放せない。
「由樹、愛してる」
「泉ッ…」
私の言葉に反応し、由樹は欲を私の中へと吐き出した。
熱い感覚が走り、私は自分のお腹を擦った。
「泉…俺のこと好きになってくれて有難う。俺と結婚してくれて有難う。…俺に、好きを教えてくれて…ありがとう」
温かい涙が私の顔に降ってくる。
由樹の頬を撫でて、私は笑顔を浮かべた。
「病める時も、健やかなる時も…変わらない愛を由樹に誓うよ…」
私達はそのまま、もう一度繋がった。
今夜の熱は…二度と治まりそうにない。
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