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スマホのアラームが部屋中に鳴り響いて、私は慌てて手繰り寄せて音を消した。隣を見るとアラーム音に少し眉根を寄せて、でも目を覚ませないでいる由樹が目に入った。
…昨夜は、少し盛り上がり過ぎてしまった。
思い出すと顔が緩んでしまう。
慰めるようなキスを何度かした後、どこかでスイッチが入ってしまった由樹に、唇を食べられそうな勢いで何度も貪られた。
酔っぱらってした最初の夜はともかく、あんなに激しいセックスをしたのは10代の時以来な気がする。何となく、初めて由樹と心も身体も繋がる事が出来たと思えた。
由樹はまだ深い眠りにいるらしい。
この部屋で彼が過ごすようになって数日、いつも私より早く起きて朝食を作ってくれていたから、何だか新鮮な気分だった。
整った顔も、寝顔だと少し幼く見える。
起こさないように一度だけ頬にキスを落とすと、初めて彼に朝食を作ってあげられる事実にやる気が出てきた。
食パンの買い置きがあったはずだから、フレンチトーストにして…シーザーサラダとオニオンスープでも作ろうか。エプロンを身につけると、まだ重く感じる腰に鞭を打って、小さく鼻歌を歌った。
スープを煮込んでいると、匂いにつられたらしい。起き出してきた由樹は、瞼を擦りながら私の腰へ腕を回して来た。甘えるように首筋にキスをされると、母性本能のような気持ちが疼いてきてしまう。
「お早う、由樹」
「泉…お早う…。無茶させてごめん、身体辛いのに朝食まで作らせちゃって…」
まだまだ眠い、といった様子を隠せないままの由樹は、今までのどこか掴み所がない様子からとは打って変わって見えた。気を許してくれているのだろうか。今までより内面に触れる事が許されているみたいで、心がポカポカとした。
「今お皿に盛るから、朝ご飯食べよう?」
照れた気持ちを悟られないように言うと、由樹は返事をせずに腰に添えた手を胸元の怪しい位置までズラしてきた。…さっき身体を気遣ってくれたばかりなのに。
「泉…仕事行っちゃう前に、もう一回しよ?」
見てないのに、仔犬の表情が浮かんでくる。
私は諦めてコンロのスイッチを切り、由樹を振り返った。嬉しそうに服の中へ手を伸ばす彼に、仕返しとばかりに首筋にキスマークをつける。
10倍程の数の紅い花弁を散らされて、私が出勤前に悲鳴を上げるハメになったのは40分後のお話。
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