星空に泣く

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恐る恐る階段を降りると玄関に腰を掛けてしゅうが待っていた。 早くしてよと小言を吐きながら、しゅうは俺の手を引っ張って行く。 「な、なぁ…しゅう…」 「なーにー?」 話しかけたのに何も言わない俺を不思議に思ったのか、歩く足を止めて振り向いた。 「どうしたの?要、今日変。」 「……やっぱり、変なのかな…」 「変‼︎」 現実世界に居るはずのない人。 会いたくて会いたくて仕方なかった人。 「要……何かあった?」 手も、唇も、身体中が震えて上手く言葉に出来ない。 話したい事、聞きたい事も沢山あるのに、それよりも涙が溢れて止まらない。 今すぐに抱きしめて、めちゃくちゃに抱きしめたいのに体は言う事を聞いてはくれなかった。 「ちょっと、ちょっと…」 だんだんと泣き声は声にならない嗚咽となって、目の前のしゅうを見ることが出来なくなった。 そんな俺を慰めながらしゅうは優しく俺の背中を摩っては呟いた。 大丈夫。大丈夫… 遠い昔に聞けなくなった大好きな人の声は優しくて、愛おしくて温かかった。
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