きれい、きれい。

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 ***  サボテン。自分をこんなに苛立たせる、元凶となった植物。  私はためしに、とても小さなサボテンを買ってみた。植え替え用の鉢など買う必要はない。何故ならこのサボテンは観賞用ではなく、すり潰して私の化粧水になるために購入されたものであるのだから。  本当に肌に塗って問題ないものであるのだろうか。いきなり顔に塗って、被れたりしてはたまったものではない。  よって私はまず、次に気になっていた二の腕に、サボテンを潰した汁を塗ってみることにしたのである。 「えい!」  キッチンでサボテンを取り出し、ハンマーで叩き潰した時。子供の鳴き声のような甲高い音が響き、それはぐちゃりと派手に潰れたのだった。変な音がするな、と思いつつも私はサボテンの“虐殺”を続行する。暫く潰すと、飛んだ汁の一部が私の腕に思い切りかかることになった。思ったよりぬるついていない、さらさらとした汁だ。ふと。 「!」  それは、明確な予感だった。私はその汁を、自分の左腕の随所に塗りこむ。シミに、悩んでいた目立つ毛穴に、大昔の傷跡に――そして。 「す、すごい!」  私は目を見張った。私を悩ませていた多くの要素が、一瞬にして溶けるように薄れていったからである。サボテンの汁の美肌効果は本当であったらしい。私はすぐさまそれを己の目の横にも塗ろうとして――ふと、あることを思い立ったのである。 ――そうだわ。  黒い感情が、ふつふつと煮えたぎり、私の口元を歪ませる。 ――どうせ、化粧水がわりにするなら。……あいつを使ってやればいいのよ。
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