サンレンジャー ~ハダアレイニーの涙~

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病院の入口前に勢いよく車が止まるのと同時に、私は外に飛び出した。 「紫待って!これも持って行って!」 振り向くとこちらに何かが飛び込んでくる。 咄嗟に掴んで見ると、それは桃のサンキャッチャーだった。 慌てて返そうとすると、桃は柔らかな笑みで首を横に振る。 「行け!紫!!」 桃――。 私は溢れそうな涙を乱暴に拭って晴人の病室へ走った。 桃のサンキャッチャーは、私のとは比べ物にならない程に眩しく輝いていて、ここまでの光になるの為には、どれほどのサンシャインが必要なのか、とても想像できない。 並大抵の努力ではこうはいかないだろう。それ程までにして叶えたい願いが桃にはあると言う事だ。 それなのに――、それなのに自分を倒そうとした相手に彼女はその夢を、願いを譲ったのだ。 私は、これ程までに人に感謝した事はない。 そしてこの気持ちは一生忘れない。 今度こそ、この光で晴人を救ってみせる。 それで全部終わったら、私は彼女へ希望の光を送り続けよう。 彼の病室の前。 ここへ来るのはあの日以来か――。 あれから色々な事があった。 だけど私は、またここに戻ってこられたんだ。 今、私の首にかかったのは、あの日首にかけた紐のネックレスではない。 胸元でキラキラと2つの太陽が輝く。 今、私の顔を遮る髪はない。 晴人がくれた優しさが私に勇気をくれる。 今、ここにいる私は昔の汚い私じゃない。 もう、迷わない。 「私は、この世で一番美しい!!」 その瞬間、胸元から光が溢れ出し辺り一面が真っ白に照らし尽くされた。 その光は閉じた瞼をも通す程の数多の強光。 「晴人!」 私は慌てて扉を開き、彼の名を叫びながら真っ白な視界の中手探りで病室内へ入って行く。 すると、ベッドの前まで来た頃、光はすーっと消えて沢山の管に繋がれた彼が姿を現す。 「晴人!!遅れてごめん!行かないで!戻ってきて、私の側にいて!!晴人・・・」 力の限り叫んだ。 あの時言えなかった思いの全てをのせて彼の名を―― すると、開く筈のない瞼が薄らと開く。 「む・・・さき、ど・・・した・・・」 長い昏睡から目覚めたばかりなのに、自分ではなく泣き崩れる私を心配して動かそうとする彼の右手を私は力いっぱい握って必死に笑顔をつくった。 「何でもない!晴人、いつもありがとう。これからは私が晴人を守るからね。もう大丈夫だよ」 晴人の瞳から一粒の涙がこぼれ落ちる。 それは決して弱みを見せなかった晴人の、本心なのだと胸が苦しくなった。 「すこし、みな・・・うちに・・・きれいに、なった・・・な・・・むらさき・・・」 「うん、綺麗になったよ。晴人は間違ってなかった!」 「やっぱ・・・こっちのほうが、・・・にあってる」 ここに来てよかった。 ここに来られてよかった。 沢山傷つき、沢山間違え、沢山罪を負った。 だけど、今この瞬間の為なら私は何だってできる。 ※ ※ ※ あの日、サンキャッチャーの中にあった光が消えてしまった。 しかし、サンキャッチャー自体は今も私の首に下がっている。 これからは自分の犯した罪を償う為、そして桃の願いを叶える為に生きていく。 その為にまずはサンレンジャーへ情報を提供しようと、桃から聞いたアジトにやって来たはいいが―― まさかレッドの別邸だったとは・・・ レインが聞いたら憤慨しそうだな・・・ 「紫!待ってたよ!入って入って!」 ※ ※ ※ ――時は少し戻って、 ジャスティスブルーは困惑していた。 「今日は一体何事なんだ!?」 アジトに来てみれば壁中が装飾され、テーブルにはご馳走、そして巨大なウェディングケーキが鎮座していたのである。 「誰か結婚したのか?」 「おや、それは初耳だね?」 「何!?結婚だと!?こうしてはいられない、すぐに式の日取りをレインに送らねば!」 「違う違ーう!今日はむっ、じゃなかった。新メンバーの歓迎会でしょ!」 走り出したスマイルレッドをドアの前で通せんぼして、キメハダピンクはなんとか場を落ち着かせた。 「そうだそうだ!皆で歓迎しよう!」 「だよね、驚かさないでよ。歓迎祝いのプレゼントを結婚祝いには出来ないからね」 そう言って、リボンのついた高級車のキーを回すリッチマンイエローから、軽やかにキーを奪い取ると、キメハダピンクは再びドアの前に立った。 「イエロー、こんなの渡したらむっ、じゃなくて新メンバーが困っちゃうでしょ!そろそろ来ると思うから私が迎えに行くけど、いい?絶対余計な真似しないで、皆大人しくしててね!!」 キメハダピンクが出て行ったところで、ジャスティスブルーは冷静に考えた。 え?今日の事、皆知ってたのか? ・・・という事は。 「知らなかったの俺だけかよぉぉぉぉぉぉーーーーーーーー!!!!!!」 end.
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