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しばらくしてから私は碧葉くんから離れた。
彼は静かに笑って私を見つめている。穏やかで優しい微笑み。
しかし私を真っすぐと、彼は今日も容赦なく見つめてくる。
いつもあなたはそうやって。
じっと見つめては、私の気なんてお構いなしにからかって、面白がって、でもギリギリのところで優しくて。
本当に、とてつもなく魅力的で、かっこよくて、恐ろしい人。
「碧葉くん、お願いがあるの」
「お願い?」
私は大きく息を吸い込む。
そして、圧倒的に美しい滑りを見ている最中に決意したことを、碧葉くんに伝える。
「私、碧葉くんのこれからを撮りたい」
碧葉くんは呆けたような表情になり、何も言わなかった。
「お願い。私にあなたをこれからも撮らせてください。今日の碧葉くんは世界中の誰よりも、そして今までのどの碧葉くんよりも、かっこよかった。碧葉くんは毎日毎日、進化して美しい景色を作っていく。私、絶対に逃したくない」
「…………」
「私が今までに見たどんな景色よりも。今までに撮影したどんな映像よりも。――碧葉くんの今日の姿は、圧倒的に美しかった。私がずっとずっと、あなたが作り出すような景色を求めていたんだろうってさっき分かったの」
今日の碧葉くんを見て、それは私の使命なんだって思えた。
一瞬を輝く碧葉くんを、私が永遠のものにして世に残さなければ、きっと人類の損失だ。
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