最高の一瞬を求めて

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最高の一瞬を求めて

 自室の窓の外には、雲ひとつない晴天が広がっていた。  網戸越しに入る夏の匂いのする風が清々しい。  今日は絶好のスケボー日和だ。  朝食を食べ終えた私は、自分の部屋で身支度をしていた。  日焼け止め、リップクリーム、スマートフォン……そして忘れてはいけない、愛用のビデオカメラ。  準備をしていると、壁にかけていたパーカーがふと目に留まった。  以前にスケートボード場で、碧葉くんから借りたものだ。  少し肌寒かった日に、彼が貸してくれた。  洗濯してから返そうと思って家に持って帰ってきて、忙しさにかまけて返すのを忘れちゃっていた。  ちゃんと彼に返さないと……。  洗ってはあるから、今日持っていこうかな。  畳んでバッグの中に入れようと、ハンガーから外した。  すると、ふわりと香りを感じた。碧葉くんの匂いな気がした。  思わず私は、パーカーに顔をうずめる。  ああ、やっぱり碧葉くんの匂いだ。  洗濯したからそんな匂い本当は残っていないはずなのに、彼の気配が、残り香がそこにある気がしてならなかった。  ――好き。好き。  大好き。  碧葉くんを感じながら、強い恋の気持ちが沸き起こってくる。  これが恋っていうんだね。  四六時中、その人のことを考えるようになってしまうんだね。  青葉くん。  こんな素敵な気持ち、私今まで知らなかったよ。
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