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私は表情を変えず、彼女らをすり抜ける。
背後からさらに何か言われた気がしたけれど、反応する気は起きない。
私はそのままスケートボード場の入口へと進んだ。
昨日、碧葉くんからは関係者として会場内に自由に入るための入場カードをもらっていた。
首からそれを下げていた私は、係員さんに軽く確認されただけで、中に入ることができた。
碧葉くんはすでにいて、ボウルの中で滑っていた。
ボウルの淵には、吐夢くんもいる。
今日は出場しない吐夢くんだけど、間近で碧葉くんのサポートや応援をしに来たのだろう。
今日もとても高く、碧葉くんは空を駆けていた。
スケボーのことはいまだにあまり詳しくないけれど、絶好調のように見える。
しばらく滑った後、碧葉くんは私の方へとスケボーで滑って近寄ってきた。
「おはよ、莉依」
いつものように、クールに碧葉くんは言う。
でもその表情はさっぱりしていて、どこか潔い。
直前に迫った決戦に向けて、腹をくくっているような、そんな気配を感じられた。
「――おはよ。頑張ってね」
碧葉くんの滑りのこと、私の映像のこと、密かな恋心のこと。
いろいろな思いを込めながらも、私はそれだけ言う。
「うん。絶対に一番高く飛ぶよ。映像、撮ってね」
「うん。近くでちゃんと見てるからね。――あ。後で借りてたパーカー返すね。ずっと返しそびれてたんだ」
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