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「前回と同じパターンなんだよね。前回も、二回目が終わった時点で卓斗にちょっとだけ負けてて。で、三回目の滑りで気張って失敗して、負けたんだ」
「――そうなんだ」
少し前に見た前回の大会の動画を思い出す私。
言われてみれば、そんな流れだったかもしれない。
「あいつも、前のこと思い出してるんじゃないかなあって。スケボーってメンタルがめっちゃ影響するから、心配だわ。まああいつは神経図太いから、大丈夫かなきっと」
「…………。わ、私、碧葉くんのところ行ってくる!」
「え、ちょっと莉依ちゃん⁉」
急に走り出した私に吐夢くんは驚いたようだったけれど、それに答えている余裕はなかった。
――私なんかが、決戦直前の碧葉くんに何かを言ったところで、きっと何も変わらないだろう。
一瞬を駆ける死闘を何度も経験している彼にとっては、メンタルのコントロールなんて慣れていると思う。
でも、もし少しでも不安に思っていたら。
前回の失敗を恐れて、彼の心の中に少しでも恐怖が生まれているとしたら。
大丈夫だよって、言ってあげたい。
あなたは誰よりも高く飛べるんだよって、伝えたい。
だって碧葉くんは、心が迷子になっていた私に言ってくれたんだ。『大丈夫だよ。莉依はすごいよ』って。
だから今度は私が、彼にそれを伝える番だ。
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