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「勝つのは碧葉くんですから。私が卓斗さんの彼女になることなんて、絶対にないんですよ」
挑むような目つきをして、私はそう言ってのける。
卓斗さんは無表情になった。
そして目を細めて私を見据える。
「……いいね、その顔。やっぱり莉依は最高だよ。悔しがって泣いているあんたを碧葉から引き離すのが、余計楽しみになったぜ」
そう言って、私に背を向ける。
私はそんな卓斗さんの背中に向かって、こっそりあっかんべーをした。
絶対絶対、碧葉くんはあなたには負けないんだからねっ!
「莉依、なんなのその面白い顔」
横から不意に話しかけられて、はっとする私。
スケートボードを脇に抱えた碧葉くんが、ジト目で私を見ていた。
ちょ、ちょっと!
いつの間に近くにいたの⁉
いるならいるって言ってよ!
「い、いや……これは。あ、碧葉くん。もしかして今の私と卓斗さんの話、聞いてた?」
「うん。たぶん全部聞いてた」
「えっ……!」
まずいまずい。
碧葉くんのライバルの卓斗さんに、勝手に喧嘩を売った上にあっかんべーしているところまで見られちゃったってことだよね⁉
「ご、ごめん碧葉くん……。勝手なこと言って……」
「いや、ありがと」
「えっ?」
碧葉くんはこれから自分が滑るボウルを眺めながら、口角を上げる。
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