126人が本棚に入れています
本棚に追加
「うん、また明日ね」
美菜は涼くんに走り寄っていった。
ふたりとも、満面の笑みを浮かべながら楽しそうに会話を始めた。
二年生になって涼くんと付き合い出してからは、美菜は彼と一緒に登下校している。
私はひとりでいることを苦痛に思うタイプではないので、別にそれについてはまったく不満はない。
まあ、ちょっとだけ「いいなあ」とは思う。
でもやりたいことで日々忙しく、他のことをする時間がない私にとっては、まるで別世界の少女漫画のような出来事のように思えてしまう。
ひとりでトボトボと校門を出てから、一度家に帰って映像データの整理をすることにした私は、通学鞄から愛用のビデオカメラを取り出した。
ビデオカメラを撫でながら、そしてまたため息。
ごめんね、二位しか取れなくて。
もしお父さんだったら、誰にも負けないような素敵な映像を撮るんだろうな。
このビデオカメラは、私が中学生の時に亡くなったお父さんの形見だった。
お父さんは、動物や自然のドキュメンタリー専門のカメラマンだった。
テレビや映画でも、お父さんの撮影した映像がよく使われていた。
お母さんも私も、お父さんが撮る映像が大好きだった。
行ったことのない場所でも、そこの匂いや音が感じられそうなリアルで美しい、躍動感のある映像が。
最初のコメントを投稿しよう!