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仕事を終えた金曜の夜。行きつけの居酒屋は、気取らない大衆的な雰囲気がとても居心地がいい。
〝私みたいな女”でも気おくれしないでいられるから。
「というわけで洸くん。キミは庶務課の腐女子さんたちの間で、日々ボーイズラブ的妄想を駆り立てているそうな。めでたしめでたし」
「めでたくないです。ちなみに男役と女役どっちですか?」
少々食い気味に、同じ課の後輩である瑞希 洸くんが身を乗り出してくる。
「女役だって。よくわかんないけど、誘いウケだとか」
「ソッチ……!?」
ゴン!とテーブルにおでこを打ち付けて、彼は動かなくなった。
この店の席は掘りごたつ式で、壁に向かって半円のテーブルが設けられている。客は並んで座る形になるので、私は隣で嘆いている彼の頭をヨシヨシとかき混ぜてやった。
「いやだぁー……。絶対イヤだあぁぁあ……」
「ただの妄想じゃん。ほら、マグロの頭食べな。美味しいよ?」
「カマはヤダっての!」
洸くんはいわゆるメシ友で、金曜の仕事終わりはいつも店で待ち合わせて一緒にご飯を食べる仲。
BL好きの女子が食いつくのも頷ける、ちょっと小柄で小悪魔的な可愛さのある美青年だ。
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