クリア☆baby

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「明日美さん、絶対面白がってるでしょ」 「うん。私、他にご飯と金曜テレビシアターぐらいしか楽しみないから」 「それってヤバくないですか? 干物女ってやつですよ」 「そこまでいってないし! せめてしらす干し……ちりめんじゃこくらいにしといて」 「ちりめん女子は認めるんだ」 「まあ、それくらいには……」  乾いてるし。  日常に張りも潤いも無い。   (って言っても、特に不満はないんだけど。むしろ楽)  ちりめん女子の生態は、仕事以外は家にこもりがち。おしゃれや化粧もあまり興味はなく、手を抜きがち。だって頑張っても私なんかたかが知れてるし。 「あれ? 明日美さん、アゴにまたニキビ出来てる」 「んー……? あ、ホントだポコッとしてる。やだなぁ」 「やだなぁって、それだけ?」  クスクスと笑う彼に、私は首を傾げた。 「なによ?」 「いや。明日美さんって、ホントに自分に構わないんだな。男同士で飲んでるみたいです」 「え」  なんだろう、今ちょっと胸の奥がモヤッとした。 「女の子ってニキビとか指摘されると怒ったり、ひどい時は泣いちゃうんですよね。こっちはなんとなく目についたから言っただけなのに」 「へー……」  泣かした事、あるんだ。 「その点、明日美さんはサバサバしてて、一緒にいても肩がこらない」  うん、それはキミにとって私が女じゃないからだね。 「食い物の好みも合うし、最強です」  考えてみたら私、この店に入る前になんとなく口紅だけは塗り直した。そんな奇特な行動の理由はいったい? 「あ、そろそろ雑炊セット頼んどかないと。金曜テレビシアターまでに帰れませんよ」  いつも通り九時までには帰そうとする洸くん。 「う、うん。そうだね……」  ちりめん女子は、自分のほのかな恋心さえ見失いがちだ。
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