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存外あっけらかんとした返事が返ってきたので、拍子抜けする。
「俺はおまけが足りなくなることを心配してるんだが」
「えー?! 結構な量を焼いたんだよ?」
普段の仕込み量の、二倍以上はあったはずだ。
手元のスマートフォンの画面を覗いた八代は「反応がいいからなー」と笑みさえ浮かべてつぶやいている。インターネットの世界は相変わらず疎いままだが、八代のこういった発言で、今まで間違いはない。
「地方都市の魔法菓子専門店はまだまだ珍しいし、夏に百貨店出店もしたし、限定の新作もSNS上で受けがよかったしな。気候がいいうちに来てくれる可能性はあるさ。なにせうちで一、二を争う人気商品『金のミニフィナンシェ』をプレゼントだぞ~? 金の粒が手に入る運試し、みんな好きだろうそうだろうへっへっへ」
魔力を含んだ「魔力含有食材」で作った嗜好品――魔法菓子。
食べれば星座が浮かび、フィナンシェのように中から「金の粒」が出てきたりする。蒼衣は魔力含有食材を扱える力を持つ、魔法菓子職人であった。
「そ、そうなの?」
「だから心配めさるなパティシエくん。君に伝えた数字で余裕だよ。十分過ぎるほど用意したさ」
「お、脅さないでくれよお」
ほっとしたのもつかの間、八代は「でもなー」と続ける。
「まあ問題があるといえば、売り子の問題だよなぁ」
うーん、とうなる八代を見た蒼衣は「あの、そのう……だよね」と歯切れ悪く答える。
「もう、二人だけじゃ回らないかもしれないってことだよ、ね?」
開店当初から、ピロートには二人以外の従業員はいない。人を雇うとなると、それなりに経費は掛かる。ゆえに二人で店を回してきたのだが、蒼衣にはもう一つ問題があった。
「開店するとき、僕が『しばらく他のひとは雇わないでくれ』って無理を言ったから……」
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