人間

「なぁ、さっきから『あと5分』って文字が視界に入ってくるんだが」

「え？俺には見えねぇけど？」

「嘘つけ。そこの角のところでチカチカ光ってんだろ」

「どこだよ。俺にはコンビニしか見えねぇよ」

「は！？赤い文字で『あと5分』って。お前の目は節穴か！」

「うるせぇ！ほら、信号青だぞ」

「ははっ。ごまかしてんじゃ……。あれ、場所変わったな」

「幻覚じゃねぇの？お前最近疲れてるって言ってたもんなー」

「幻覚なんて簡単に言うなよ！まじ怖ぇから」

「いやいや、笑い事じゃなくてよ…。あーあ。こんなことなら寝てた方がよかったかもな」

「んなことねぇよ。映画も久しぶりだし。お前と出かけるのもな、何か月ぶりだろ」

「んー。でも、1ヶ月ぐらいじゃねぇか？お前が忙しくなってきた頃。ってかお前本当に大丈夫か？ふらふらしてるけどよ！」

「大丈夫だって。ちょっと眠いだけ。映画観てる間寝ちま…う……かも、な。やべ」

「おいおいおい！道の真ん中で寝るなよ！……え？大丈夫か！？」

「ははっ。慌てすぎだろ…。そういや……お前も俺と同じぐらいだっけな…。忘れてたよ……」

「何が！？何の話して……いや、え！？なんだ、今救急車呼んだから待ってろ！」

「もう無理だよ。『あと1分』って……。慣れちまうってのは…怖いもんだな……。すっかり忘れてたよ……。お前も覚悟しろよ。今まで、あり＿＿＿＿………」

「おい！おい！！意味わかんねぇよ！どういうことだ、説明しろよ！……あ？なんだこれ、お前が言ってたやつか？なぁ、『あと5分』ってなんだよ！！ちゃんと説明しろよ！！！」