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サービス接遇編 chapter09 対人技能-接遇知識~一般マナー~-
”ザーーーーーーーー…”
”スタスタスタスタ…”
「…やっと着いたわね…」
「ふぇ~ん…傘差していたのに、びしょ濡れになっちゃったよ…」
今日はパソコン部OBの方の自宅で、部活の主要メンバーが集まりランチ会が催されることになっていて、私と妹の美琴も招待された。
ところが、生憎の雨で、私と美琴は傘を差していたにも関わらず、肩付近を中心にびしょ濡れになっていた。
門をくぐり、屋根のついた玄関先に入った私と美琴は、傘を畳む。
「…いつもこれをやる時って、手が濡れちゃうんだよね…」
そして美琴は、自宅でそうしているように、そのまま傘を丸めようとした。
「美琴!ちょっと待って!!私たちの家じゃそうしているけど、家族じゃない人の家とか、お客様の個人宅に訪問する時に、濡れたままの傘を持ち込むのはマナー違反よ!」
「えっ!?そうなんだ…私は家でそうしているから、これがマナーかとばっかり…」
***
濡れた傘やレインコート等は、玄関先で雨の雫を払い、玄関の中に濡れたまま持ち込まないのがマナーとされています。
傘は雫を払ってから丸めて傘たてに置かせて頂き、レインコートの場合は濡れた方を内側に小さく畳んで、玄関の脇に置くようにしましょう。
***
「やぁ、いらっしゃい!」
「先輩!お久しぶりです!!」
「こんにちは!お邪魔します」
そう言うと、美琴は身体を180度回転させ入口の方向を向き、靴を脱ごうとする。
「ちょっと美琴!その靴の脱ぎ方もマナー違反よ!」
「真琴さん!詳しいんだね…もしかして…」
「はいっ!足達先生の選択授業を受けて、今接遇のことを勉強しているんです!!」
***
靴を脱ぐ際、入口方向に向き直り靴を脱ぐ人をよく見かけますが、これもマナー違反です。
正しくは、入ってきた方向のまま靴を脱ぎ、上がってから入口の方向に向き直って、靴の向きを変えて隅に寄せるのが、正しい作法と言えます。
***
「そうだったんだぁ…先輩、失礼しました!」
「いやいや、気にすることないよ!それに、何はともあれ元気な「挨拶」は出来ていたから、マナーの基本的には問題ないんじゃないかな!!」
***
一般的なマナーの基本として「挨拶」がきちんとできること、というのがあります。
全てのサービス業務は、「挨拶に始まり挨拶に終わる」とも言われており、礼儀正しいお客さま応対は、店の格グレードを高めることができるのです。
***
「さて、全員集まったところで昼食会と行きますか!」
「やった~いただきます!!」
「それにしても、たくさんお料理があって、迷っちゃうなぁ…」
「美琴!「迷い箸」はダメだからね!」
「さすがに、それは分かってるって!」
***
飲食にもさまざまなマナーがあります。一例としては…
・ナイフとフォークは外側から使う。食べ終わったら皿の上に斜めに揃えて置く。
・手を休める時は、ナイフとフォークをハの字に置く。
・パンは一口ずつちぎり、品よく食す。
・ナプキンやフォークなどを落とした際やバターや調味料等が必要な際は、ウエーターを呼び対応してもらう。
・コーヒーや紅茶などでスプーンを使ったら、スプーンから液が垂れないよう、カップの上で軽く振ってからソーサーに置く。
・ワインは、グラスをテーブルの上に置いたまま注いでもらう。
・トイレ等でその場を中座する場合は、静かに挨拶をしてその場を離れ、ナプキンは畳んで椅子の上に置く(その場の雰囲気を壊さない配慮)
また、真琴さんが美琴さんに注意していた「箸遣い」のタブーには、次のようなものがあります。
「迷い箸」箸を方々に動かすこと。惑い箸とも言う。
「探り箸」皿に盛られている料理を探るようにかき混ぜて取り出すこと。
「ねぶり箸」箸をなめること。
「移り箸」次から次へとおかずを取り、口に運ぶこと。
「刺し箸」煮物などを箸で突き刺して取り、食べること。
「渡し箸」箸を茶碗や皿に上に置くこと。
「握り箸」箸を握ったままで茶碗や皿などを持つこと。
「寄せ箸」箸で小鉢などを引き寄せること。
「涙箸」料理の汁が垂れるのも構わずに口に運ぶこと。
これらの箸遣いは、家庭ではついついやってしまうものばかりです。招かれた先でこのような箸遣いを行わないよう、普段の食事から注意を払っておく必要があります。
このように、良識ある態度やマナーは、対人関係や公共心などに対し理解があって、初めて身に付きます。
食事のマナーは細部に渡りありますが、基本は「相手と楽しく食事を取るための作法」であります。
面倒臭がらず、普段からマナー意識した食事の作法を心がけておきたいものです。
***
「それにしても、真琴さんを見ていると、何だか母さんに色々と言われていた時期を思い出すよ…」
「先輩!普段はこんなんじゃないんですよ…美琴のマナーがなっていないものだから、つい…」
「そんなことないもん!それにお姉、最近マナーについて勉強が進んでいるもんだから、ちょっと口うるさくなってない!?」
「私は、美琴のためを思って…」
「煉!この2人は、いつもこうなのか?」
「そうですね…」
「…お前も苦労してそうだな…」
「…まぁ、多少は…」
「…頑張ってくれ…」
「…先輩、フォローになってないです…」
…
chapter10 に続く
-検定問題にチャレンジ!-
保険会社の営業担当佐々木美也子は、個人のお客さま宅を訪問の際に心がけることとして次のように教えられた。中から「不適当」と思われるものを一つ選びなさい。
(第32回 サービス接遇実務検定3級より)
「1.服装は、整っていることと清潔な感じがすることを心がけ、お客さまに派手と思われないようにすること。」
「2.中には世間話が好きでなかなか終わらない人もいるが、嫌な顔をせずに付き合うようにしないといけない。」
「3.病気の話が出たときは、病気はその人でないと分からないことなので、話題を変えるようにした方が良い。」
「4.訪問することを約束してある場合でも、訪問するときは、訪問することを事前に電話してからにすると良い。」
「5.仕事中のお客さまを尋ねたときは、仕事の邪魔と思われないように、仕事をお続けくださいと言って待つのが良い。」
「不適当」な選択肢は…
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「3.病気の話が出たときは、病気はその人でないと分からないことなので、話題を変えるようにした方が良い。」
-解説-
病気の話(症状など)は、本来的には本人しか分からないのはその通り。が、相手が話すのは、分かってもらいたい、聞いてもらいたいなどの気持ちが働くから。となれば、営業担当者としては一緒に話すのが心掛け。話題を変えるようになどは「不適当」ということになります。
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