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天体写真家のお父さんが星になったのは私が8歳の時。
当時の私にも「死ぬ」って事はどう言う事かはちゃんとわかっていたけど、お父さんは本当に星になったんだと思ってる。
だって星空の事を話すお父さんの顔はいつもキラキラしていたもん。
きっと星とお話していてそのまま夜空に吸い込まれてしまったんだ。
だから私は悲しい事や嬉しい事があるとお父さんが遺した天体望遠鏡を担いで高台の公園に行き、そこで話をする。
お父さんが家に居る数少ない時は、いつも一緒に星を見に行っていた大切な場所だから。
でも今は……
「穂音ちゃん、流れ星!」
私の横ではしゃぐのは、同じマンションの隣に住む一つ年下の幼馴染の明桜だ。
女の子みたいな名前だけど、れっきとした男の子。
けど、男の子なのに私より白い肌・大きな丸い瞳に長い睫毛。
サラサラした髪にまだ声変わりしていないハイトーンボイス。
初対面の80%の人が私服の明桜を見たら女の子だと思うくらい、可愛い男の子……が隣にいる。
あれはお父さんが星になって3ヶ月が過ぎた頃。
色んな事が片付いてお母さんも私も一息着いた途端、急に悲しさが押し寄せて来た。
━━もう二度と生身のお父さんに会えないんだ。
そう思うと涙が止まらなくて、お父さんの天体望遠鏡を持って家を飛び出した。
でも8歳の私にはそれはとても重くて。
しかももう外も暗い20時過ぎ。
気づいたお母さんと玄関先で口論になった。
そしたら気付いた明桜とおばさんが見に出て来てくれて、一緒に公園に行ってくれる事になったんだ。
でも、生憎その日は曇りで。
せっかくおばさんが手伝って組み立ててくれた望遠鏡を根気よく覗いても、星はほとんど見えなかった。
私は2人に申し訳ないのと、星が見えない悲しさでまた泣き出してしまった。
慰められても止まらない涙。
「お父さん」
「お父さん」
私は夜空に向かって必死に名前を呼んだ。
そしたら、明桜がギュって……抱きしめてくれた。
「穂音ちゃんのお父さんに、僕がなるから!」
「えっ?」
「僕、穂音ちゃんの側にずっといるよ。お父さんになってずっと穂音ちゃんを守ってあげる!」
そう言った明桜の顔も涙でぐしゃぐしゃだった。
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