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「もうー明桜ってば、早く起きて!」
「ふにゃー、もうちょっと寝かせてぇ」
登校前は格闘の時間だ。
早朝から仕事に出かけるおじさん・おばさんに変わって、朝が弱い明桜を起こし、朝食を食べさせるのは私の役目。
「ダメだったら、ほら早く」
「まだ眠いんだよう……」
ほんとに手がかかる。
お父さんの代わりには一生なって貰えないんじゃないかな……。
明桜を無理矢理ベッドから引きずり下ろし、急いで制服を渡した。
小学校までは着替えも手伝っていたけど、さすがにね……。
だけど今日の明桜は一向に起きようとしない。
「もう!遅くまでゲームしてたんでしょ」
仕方なく、カーペットの上で丸まる明桜のパジャマのボタンを外した。
「!」
アンダーシャツを着ていると思ったのに、見えたのは白い素肌でドキッとする。
そして気づく。
体は私より小さいのに、いつの間にこんなに筋肉がついていたの?
ドクンドクンドクン……
急に心臓が騒ぎ出した。
男の子の肌なんか、クラスの男子が体育の後にところ構わず着替えをするのを見て慣れている筈なのに。
「う……ん」
明桜が目を擦った。
私はビクッとして我に帰る。
「いい加減起きて!」
うっすらと六つに線が入ったお腹を手加減なく叩いてしまった。
バシン、と気持ち良い位の音と明桜の声が揃う。
「っ、たあーい!何すんの、穂音ちゃん」
「早く着替えてご飯食べに来て!」
私はその場にいるのがいたたまれず、明桜の顔は見ずにダイニングスペースへと逃げ出した。
なんなの。
なんでこんなにドキドキするんだろう。
明桜なんかまだまだ甘えんぼの弟なのに。
……そうだ、子供だとばかり思っていたのに急に「男の子」っぽい所を見せられてビックリしただけ。
きっと、それだけだ。
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