#2 独りにしないで

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#2 独りにしないで

兄がアイスを渡して15分ほど経った。 あんなに真っ青な顔で出ていくなんて、 よっぽどの用事なのか。 いつもに比べたら、あまりにも不自然で 気持ちが落ち着かない。 これが胸騒ぎってやつだろうか… ハーゲンダッツを口に運ぶ。 いちご味。 定番で置いてあるし誰もが1度は口にするんじゃないだろうかと思う。 シンプルにおいしい。 チクタクと部屋の時計が秒針を刻む。 「はぁ…まだかなぁ…」 用事っていつまでかかるんだろう。 まだ空は明るい。 夜の買い出しにも行ってない。 冷蔵庫の中身は大したものが無いし、 とりあえず買い物にでも行こう。 携帯を手にとり、 お兄ちゃんに連絡を入れておく。 送信する前に、ドンドンドンと強く扉を叩く音がした… インターホンがあるのに何でだろう… ふと覗き穴を見ると怖い顔をした男が3人ほど扉の前にいた。 嫌な感じがする。 お兄ちゃん…私は携帯で連絡を取ろうとすると、 バッドタイミングで友人から電話が鳴る。 焦って窓側に携帯を持って走っていくと、 「中にいる!」と男の声がする。 ガチャガチャと扉のドアノブをいじられ、 どうしたらいいのかわからず、 クローゼットの中に隠れた。 カチリと音がして、 足音が部屋の中をバタバタと行き来する音がした。 息を殺して布団の隙間にいるが、 いずれ見つかってしまう… なんとかして逃げないといけないが、 部屋に入ってきた男は3人は居た。 絶対振り切るのは難しい… そう考えているうちに、スパン!と勢いよくクローゼットが開かれる。 1人の男と目があった。 「手間かけさせやがって」 そう言って黒い手袋を付けた男が私の腕を掴み無理矢理クローゼットから引き摺り出す。 「痛い、嫌っ!」 暴れようとしたが、腕の力が強く振り解く事もできないまま羽交い締めにされた。 「おいおい、俺たちは連れていくだけなんだから手は出すなよ?」 「わかってる、うるせぇなあ」 男達の言葉を聞いて嫌な思考が巡る。 手を出すとか出さないとか… それってつまり…星那は…今から… 身体中が冷やっとして、不安からか喉が乾く。 苦しい、声が出ない。 担がれて、外に出されると黒光する車が見えた。 「大人しくしてろよ」 と車の前まで来てもどうしたら良いかわからず 心の中でお兄ちゃんを呼んだ。 助けて、早く帰ってきて… 星那を守ってくれるんじゃないの? …お兄ちゃん… 1人の男が車に手をかけると、 運転席から誰かが降りてきて、 全員がハッとする。 「こんないい車に乗ってんだから、鍵ぐらい管理したほうがいーんじゃない?」 にっこり笑うサングラスの男の子。 どうやら黒服の男達とは関係がないようだった。 「お前、鍵を渡せ!!!」 車を開けに行った男はサングラスの男に手を伸ばすが、さっと躱される。 不快に思ったのか、「逃げんじゃねぇ!」と男が彼に殴りかかるのだが、ふわりと車の上にサングラスの男の子は飛び乗った。 「戦いに来たわけじゃないんだよね、そこの女の子を渡してくんない?」 イライラしているのか、彼は車を蹴り飛ばす。 誰もが見るところ高級車なのに乗っかるし蹴るし… マナーがなっていないというか… でも星那にとって悪い人では無い… 思い切って、唖然とする男の腕を私は振り切った。 「乗れ!!!」 サングラスの男の子が近くにいた黒服の男を殴り飛ばし、車に乗ってエンジンをかけた。 扉を開けてくれたので身を滑り込ませるように乗り込む。 まるで映画のワンシーンのように、 ほんの一瞬の出来事だった。 「…ふざけんな!!」 と男達の声が車の後ろからする。 スピードをいきなり上げた車はキュルキュルと音を立て急いで狭い道に潜り込もうとした。 ズガンッ…パリンッと音がして、車の後ろの窓ガラスが割れる。 「きゃ!!」 助手席で思わず怖くて身を縮こませた。 「ふざけんなよ、こんな住宅街で拳銃ぶっ放す馬鹿がいるか!!!」 サングラスの男の子が、黒服達にクラクションを鳴らして威嚇すると、一気にまたアクセルを踏んで車を走らせる。 あまりの速さで人を引くんじゃないかって思ったが、暫く速度を変えず走るので目を瞑ったままだった。 不安な中で急に速度が落ちていき車が止まる。 「おりて」というので少しふらつきながら車から出る、酔ってるわけではないが怖かった後の反動かな… 車を乗り捨てると目の前に狭い通路があり、人が1人入る分ぐらいの道を男の子と歩く。 「ごめんね、いきなり…俺シキコー2年A組鷹左右春輝って言うんだけど星那ちゃんって君だよね」 と言われて余計に混乱した。 「星那であってます…というか免許持ってないのに運転したんですか!?」 とりあえず先輩だから敬語にしようとは思うが、 あまりにも滅茶苦茶な事をしているのに驚いた。 この人を信用していいのか、 不安がよぎり逃げようかとも考える。 「…運転は仕方ないでしょ…逃げなきゃいけなかったし…」 「……なんで…星那を助けたの?」 理由次第ではついて行くのはやめようと考えていたのだが、思わぬ人物の名前が出た。 「京極ゆかりに頼まれて来たんだよ?…あ、飴でも食べるー?」 不意にポケットから出された飴を私は手に持たされた…さくらんぼの味だ…嫌いじゃない。 さっきまで喉もカラカラだったので口に飴を入れると、程よい甘味で渇きを誤魔化せた。 安心したのか、足が震えて、 少しだけ目眩もした。 「ゆかりさん…」 そう言って前を歩く春輝さんを目で追うが視界がぼやけて、思わず壁に手をついた。 ドンッと壁にもたれ、寄りかかるような状態になってしまう。 「ん!…貧血か?」 春輝さんの声が星那に近づいてくるが、いまいちぼんやりしていて聞こえない。 手から飴が滑り落ちる… なんとなく暖かいのが体に伝わり、 バッと視界が明るくなって、 自分がおんぶされていたことに気付いた。 「平気?一瞬気を失ってたけど…」 「…すみません…」 不意に兄のことを思い出す。 小さな時にこうやって、おんぶしてくれたことがあったっけ…お兄ちゃん… 「もしかして、お兄ちゃんの居場所知りませんか?」 私が口にすると、春輝さんは立ち止まる。 「俺、星那ちゃんのことよく知らないけどさ…嫌な予感がすんだよね。」 それを聞いて私も同じ気持ちだということに気づく。 「星那も…同じです」 徐に春輝さんが携帯を取り出して打ち込む。 覗き込むとただの数字の羅列だった。 意味が全くわからない。 「やべぇな」 急に春輝さんが一言発すると、後ろから黒い影が近づいてくるのがわかった。 さっきの奴らとは違う…でも明らかに仲間だろう。 向こうは無線機のようなもので何か喋っている、まだ距離はあるので少し余裕がありそうだが、こちらにいつ気づくのか… 春輝さんが私を背中から下ろして話し出した。 「賭けに出るしかねぇな……あのさ、このまま道まっすぐに抜けたら、まるみ屋があるんだけど…裏口から入れば見つからないだろうから、もち子さんも今いるだろうし、なんとか…まるみ屋まで駆け抜けて待っててくんない?」 そう言って私の背中を押す。 自分は囮になろうとしているんだろうか… あの人達は銃を持っていたし危ない筈… 命の保証はない。 「早く行って」 春輝さんが迷う私の背中を強く押すので、 「わかりました、気をつけてください!」 足手纏いになるくらいなら…と思いそれしか言えず、そのまま真っ直ぐに私は春輝さんに背を向けて走り出した。 … 暗い道を星那ちゃんと逆に向かって歩き出す、 目の前にいる俺よりガタイのいい男に向かっていくと、少しだけ冷やっと背筋が凍る、 撃たれたら即死。 まぁこんな明るい時間だったり、 人も少ないが出歩いているわけだし… まさか銃を使うとは思えない。 パッと眩しい光に当たる。 スポットライトが刺したかのような感覚。 「あちぃなぁ…」 口にお気に入りのタバコを咥えさせると、 メンソールの香りで少しだけ暑さが和らぐように感じた…カチッと火をつける。 すぐさま、黒服の男は俺に気づき、 「居たぞ!」と無線に声を発する。 俺は加速して男に詰め寄り無線機を叩くと、 ガシャンッと勢いよく壁で粉々になる。 気持ちがいいものだった。 「てめぇ!!!!」 壊されて怒った男が俺に拳を振るが、 体が大きいためか速さがない。 ただ、交わした瞬間思いっきり背中にあった ガラス戸を粉々に男は割った。 「わぁ、器物損害〜♡」 「先にやったのはテメェだろうが!!!」 手から血を流しながら男は俺を指差した。 そんなに無線機が大事だったのか…変な違和感を感じる…痛くないのか? チラッと横目に見ると見慣れた機械が光っていたので踏み潰す。 成る程ね…GPSが搭載されてるんだ。 「てめぇもしかして、それを踏むってこたぁ…いろいろわかってんな?」 腕にハンカチを縛りながら男は上着を脱ぎ捨てた。 やる気満々だ。 自分から出て行ったが非常に嫌な感じだった… 「なんのはなしー?」 はぐらかすと、チッと男は唾を吐いた。 その瞬間違う足音に気付く…1人…2人だな… 多分こいつ以外に2人ぐらい隠れてる… めんどくさい。 近くにあった軽々しい丸椅子を拾いあげると、 「何してんだ…」 と警戒して俺から少し男は距離を取る。 「あとはお前が責任とってね?」 後ろ側の古びた家屋はボロボロだしおそらく誰も住んではいない… 敵に背を向けるのは良くなかったが、 力強く丸椅子をいくつか背後の家屋に投げ入れるとガラス共々凄まじい音と一緒に吹き飛んだ。 「いってぇ!!!!」 おそらく、家屋の裏にいた男が被害にあったようだ…ガラスが刺さるのはかなりいたいだろうな。 「くそッ!!!」 後ろから走って殴りかかってくる大男は、 やっぱり鈍い。 拳が俺をすり抜けるが、まるで世界がスローに見えた…弱すぎないか? 俺が避けるのが面倒くさくなってきて、大男の顔面にストレートに決めると地面に男は蹲る。 「…もしかしてさ、雇われ?」 後ろから襲ってこない2人、 ずっと様子を見てるのか、怪我をしているのか、 殺気を感じるわけでもなく連携も取れていない。 もしや、適当に集まったチームとかなんだろうか。 「ヒぇぇぇぇーーーーーー!!!」 いろいろ考えていると急に鉄パイプを持ったひょろっとした男が俺に向かって走ってくる。 その瞬間嫌な感じがした… 焦点がまるであってない。 カツンッと、俺を避けて鉄パイプは地面に当たる。 俺のことなんか最早見えてないんだろうな… 息も絶え絶えに地面に向かって何度も鉄パイプを打ち付ける男… 相当やべぇぞ… 思わず蹴り飛ばすと男の体は軽いからか思った以上に吹き飛び…白目を向いて泡を吹きながら倒れた。 上着にある無線機を取り出すと、白い粉の入った袋が落ちる。 やっぱりな… 「「ぁぁぁぁあぁあ!!!」」 急にずっと動かずにいた男と後ろで待機していたのか、もう1人の顔がコケた男が俺に向かって走り込んできたので、思わず袋を投げた。 地面に落ちる粉が飛び散ると、投げた先に2人は群がりハイエナのように集りながら物をかき集めていた。 …異常な光景だ… 目的は俺じゃない。 おそらくこいつら、戦えるのか戦えないのかってレベルの話じゃなくて…ただ拳銃を持たされて粉の為に動かされてるだけだ。 ガンッと2人に一撃首の側面に入れて気絶をさせる。 このままにしてもいい事はない。 黒服達の服を漁りとりあえずGPSの遮断… 3つほど粉の袋があったので、 ゆかりに調べてもらうために1つはジップ式のバックの奥のポケットにしまった。 1人だけ携帯を所持していたので、 履歴などを見てみるが全くもって手掛かりになりそうなものがない… …静かだ… 辺りを見渡しても人の気配もなにもない。 不自然な気がしてぐるっと見渡す… 一つだけあった拳銃を片手でクルクルさせながら、様子を伺う… いない… ハッと上を見上げると、屋根の上に嫌な機械がついていた… 「監視カメラとかマジかよ…」 ひとつだけあり得ない場所に監視カメラがあった。 俺は向こうからしたらしぶとい鼠だろう。 これは罠かもしれない。 銃口をカメラに向けて撃鉄を起こした。 カチリと音がする、知り合いに本物を使う人がいるしサバゲーで偽物を触ったことは有るが、はじめて本物を撃つな。 なんて思いながら遊び感覚で引き金を引いた。 ガウンッと音がしたかと思えば、 腕に反動が渡り、 次の瞬間カメラが粉々になる。 俺は拳銃をその場に投げ捨て、走り出した。 音を聞きつけた仲間はきっと集まってくると思ったからだ。 しかし、変だ… あの監視カメラをつけたやつと、 拳銃と粉を持った奴らと…仲間じゃないのか? 俺をただ見ていただけなら不気味だし… なら実際俺が狙われる可能性も出てくる。 星那ちゃんと走っていたところまで戻ってくると、 走り込んだ先に1人の少年が立っていた。 まるで俺を待ち構えているかのように… 敵意は無さそうだがホラーゲームによくありそうな展開だ。 裏道を抜けて、少年と対峙した。 「何の用ー?…俺急いでんだけど」 そう話しかけると少年は人差し指を自分へと向けて、にこにこと笑っていた。 「僕は君をずっと見ていた」 やっぱり嫌な感じだと思ったが、 まさかお化けですとか言い出さないか不安になる、こういうやつは大体めんどくさい。 どう見ても人間だったし、弱そうだった。 「取引をしよう」 色素が薄めなブラウンの髪をした少年は天使のような微笑みで俺にパソコンを開いて向けてきた。 画面にはさっきまでの俺の姿が映る。 「僕の名前はデビル、みんながそう呼ぶからそう呼んで欲しい」 「……で?取り引きってなに?」 つまり、俺の映る映像を警察に突き出さない代わりに何かをしようとしてるわけだ。 「僕に手を貸して欲しい、詳しくは後日話すよ…代わりに今逃げてる奴らの情報をいくらでもあげる」 そう言って携帯を差し出してきた、 LINEのQRコードか…今はとりあえず従ったほうが早く終わるだろうと即座に交換した。 「後で春輝くんにヤツらのデータを送っといてあげるね」 「もう言っていい?」 軽々しく名前を呼ぶのも気持ちが悪く感じて、 俺が話をぶった切ると悲しそうな顔をしていた。 「…またね」 そう言って手を振られたので、 俺は何も言わずにデビルから背を向けて走り出した。 「やっと話せたね…春輝くん…君は…」 …… まるみ屋に来てから1時間以上は経った。 もち子さんは私に優しくお茶と菓子を出してくれる… だんだんと日が暮れてきていた。 その瞬間、裏口の扉がが勢いよく開いて縁側にドサっと春輝さんが寝っ転がった。 「ばぁちゃん、水くれーーー」 「ハルちゃん、怪我してるねぇ…また喧嘩かい?」 「そんな感じーーー」 手が真っ赤に腫れてるのを見て申し訳なくなったが、私は同時に来てくれてホッとする。 「春輝さん…無事でよかったです…」 「あーーー…うん、ちょっと遅くなった…あ、ゆかりから連絡来てた…急いだほうがいいかも」 春輝さんが自分の携帯をサッと見ていたので一緒にみたが、またもや数字の羅列だった… 少しだけ言葉も書いてあるが… 「はい、ハルちゃん」 水を出され一気に春輝さんが飲み干す。 「いこう、星那ちゃんのお兄ちゃんは…駅にいるらしい。」 私は思わず立ち上がった、 嫌な予感は的中する。 既に目から涙が溢れてきた。 なんでだろう、苦しい、悔しい。 なんとなく心のどっかでわかっていたのかもしれない。 迷惑ばっかりかけてたんだと思う。 でも、お兄ちゃんは何も言ってくれなかった… ずっとずっと信じてた、 辛いなら話してくれるって、 星那にも頼ってくれるんだって、 信じてたのに。 私もう子供じゃないんだよ…… 春輝さんと全速力で駅に向かった、 19時半を過ぎて空は暗い。 駅が見えて来ると、切符なんて買っていられないから駅に添った柵をただただ走り抜けた、 その時に目の前にゆかりさんがいるのがわかったので、「ゆかりさん!!!」と叫ぶ… ハッとしてこっちを見たが、すぐさま、ゆかりさんが電車のほうに向かってゆびをさした。 そこには会いたかった人物がいる。 「お兄ちゃん!!!!!!!」 ハッキリと聞こえるように精一杯叫んだ、 少しだけお兄ちゃんがこちらを振り向いた… 「どこ言っちゃうの!?ヤダよ!あの男達は何?!!!ねぇ!なんとか言ってよ!!!」 今にも柵を乗り越えようとする私を 春輝さんが抑えていた。 柵を越えても出発までの時間がないし無意味なのは分かってる…でも! 「ごめんな…」 最後の方は聞き取れなかったが、多分そう言っていた…唖然としていると、お兄ちゃんが電車に乗り込んでいった… その瞬間に丁度出発の合図がする。 いやだよ…行かないで… 春輝さんの腕を振り解いて私は叫んだ。 「せなは俺が守るっていつも言ってたじゃん!!なんで…なんで……!」 扉が閉まって、涙が止まらなくて、 ぎゅっとゆかりさんが私を抱きしめてくれたから、 思いっきり胸に泣きついた。 最悪だよ… 全部夢ならいいのに… お兄ちゃん… 何もしてあげられなかった。 お兄ちゃんが辛くて逃げ出すまで、 私は、今も状況がよくわからないし… こうなるまで何もできなかった。 苦しいよ。 悲しいよ。 … ふと、目が覚めると風鈴の音と虫の鳴く音がする。 扇風機の風が当たって気持ちがいい… 「目覚めましたか?」 優しい声がした…ゆかりさんだ… 「はい…」 私が目を擦りながら体を起こすと、ゆかりさんは立ち上がる。 「嫌!行かないで!」 思わずゆかりさんの服の袖を掴んでしまった。 「お水を取りに行こうかと思ったの…ごめんなさいね」 ちょっと困った顔は暗がりでもよく分かった。 いま1人になるのは不安で… 「星那ちゃん」 ぎゅっとゆかりさんに手を握られた。 「いっぱい不安があると思います、無理しないで…私がずっとついていますから」 そっと頭を撫でてくれたので気持ちが良くてだんだん落ち着いて来る。 まるみ屋商店で話していた時からそうだったけど…ゆかりさんといると安心しちゃうんだ… 「お腹空きませんか?…おにぎりがあるの」 そう言って、おにぎりとお茶を持ってきてくれた。 ゆかりさんはご飯を食べる私に簡単に説明をしてくれる… 私が今狙われている事、お兄ちゃんには身を隠してもらっている事、ゆかりさんはヤクザ絡みの医者であり昔から情報を知っていてお兄ちゃんに手を貸していたこと、鷹左右春輝は鷹左右組の双子の片割れで…そこの息子である事。 やっと自分の中で話が繋がった。 「ゆかりさん…でも、どうしたら…」 私は自分が身代わりになりさえすれば、 お兄ちゃんは普通に暮らせると思ったりもした、 でもそれは望んでる事じゃない。 なら…どうしたらいいんだろう… 「ワタクシが力になります…2人がこの街で普通に過ごせるように」 いつもより力強く言われ、ドキッとする。 …ゆかりさんらしくは無いのだけど… そこには意思が強く感じられた。 「ワタクシね、2人が大好きなのよ」 ぎゅっとまた私をゆかりさんが抱きしめてくれる。 嬉しくて身を寄せて、ゆかりさんの話を聞いていた。 「きっと大丈夫だから、今は安心して眠ってくださいね…」 そよぐ風と、 ほんのりゆかりさんからした甘い香りと、 夏の虫の音、 風鈴が優しく揺れて、 辛い事を慰めてくれる… よく来ていた まるみ屋商店だったからなのか… 疲れで私は深い眠りに落ちていった… 星那も… もっと強くならなきゃ… お兄ちゃんが帰ってきて… また一緒にたくさん話したり、 笑ったりしたい。 絶対また会えるよ。 私は信じてる。 だから、お兄ちゃんも強く生き抜いてね… 星那との約束だから… 忘れないでね。 END … はい… 毎度お馴染みの… 神条めばるです。 みなさん… こんばんは… 今回は悲しくて語るも涙になるんですが、、、、!!! …星那ちゃんを心配していた方は結構前々から設定を読んでる段階で不安になっていたのでは? …そのまさかの状況を今回シナリオで手掛けさせていただく事に…!!! 光栄でしたが、 書いていてめちゃくちゃ悲しかったです… 星那ちゃん、、、兄の桔梗くん… 複雑な2人の環境がまた、切なさを呼びますね。 詳しく知りたい人は是非、星那ちゃんのTwitterの説明文に目を通して見てね! さてさてさて、 何から語りましょう… 今回なにがって、 ゆかりにとっては新しい自分のスタイルを出していけるし… この、星那ちゃんとの話が彼女にとっては、 変われるきっかけの一つとなってます。 又、春輝は複雑な気持ちを抱えます。 詳しくは語れないんですが、 こっからは、ゆかりと春輝… 一気にイメージが変わっていくと思います。 夏休みの中でまた、次の話が上がりますが… 是非それを楽しみにしていてくださいませ! …桔梗くんは、どこへ行ったのか。 …星那ちゃんは、どうやって成長するのか。 次回のストーリーで謎がいろいろわかってくるので、気になる人はもうちょっと待っていてくださいね… 取り敢えず、まるみ屋夏祭り出店前に、 大事件も起きます。。。 …悲しい夏休みばかりじゃないと良いなぁ。 …よし、 たくさん語るのは次回にして、 今回はここまで!!!! ではまた◎
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