六月二十七日、日曜日、梅雨の合間の暑い日

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 ――あぁ妻よ、あぁあぁ暖菜(はるな)よ、あぁ嫁よ。  こんなこと俺は聞いてないぞ。君は知っていたのかい?  おれは脳内で、嫁に語りかける。すると脳内のちび暖菜(はるな)は、ちょっとむっとしながら答えた。 『知ってたよ。ていうか、わたし、太陽(たかあき)くんに教えようとしたんだからね。  あの子、好きな人がいるんだって、って。  でも、太陽(たかあき)くんってば聞こえないふりして、ずうっとお笑い番組見てたんだもん。  太陽(たかあき)くんが今ショックを受けてるのは、自分のせいなんだからね』  ……あ、はい、スミマセン。 「お、お邪魔します……」  俺の脳内劇場をよそに、奴はそう言って、我が家に足を踏み入れた。  正直、「うぃーっす」なんて言う阿呆が来たらマジでぶん殴りたいところだったけれど、どう見てもこの子はそんなこと言いそうにない。真面目そうな子だ。けど、それはそれでどうしていいかわからない。いや、いいことなんだろうけれど。あぁもう、頭が混乱してきた。 「あ、こっち。よかったらどうぞ」  とりあえず、リビングに案内する。俺の声も俺の声で、緊張しすぎていて自分でも笑えるくらいだ。 「失礼します……。あ、こんにちはー……」  リビングに入ってくる彼は、テレビの前でゲームをする息子に頭を下げた。息子は一瞬びっくりした顔をしたけれど、首だけ動かして挨拶をする。 「こら、(だん)。ちゃんとあいさつしなさい」  俺がそう叱ると、息子はしぶしぶと「どうも」と言った。まったく、この子は。 「あぁ、もう、ごめんね!愛想がなくて」  慌てて俺は少年に謝る。……いや、なにやってるんだよ、俺は。  俺のそんな言葉に、彼も慌てる。 「いやいや、おかまいなく。お邪魔しちゃって申し訳ないです」 「そんな気を遣わなくていいよ。うちの娘がいけないんだから。  あ、どうぞ、座って。ごめんね、今麦茶しかないけど」 「あ……ありがとうございます」  冷蔵庫を開けて、麦茶を取り出す。来客用のグラスを取り出したとき、ふと、我にかえった。
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