僕の顔

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僕の顔

僕は爪先に挟まった泥を洗いに洗面台に向かった。石鹸でよく手を洗い、顔を上げて 、ふと、洗面台の鏡を見ると、僕の顔がいつもの僕でないような気がした。僕はじっと3分間、自分の顔を見つめた。僕は自分の顔を真正面から眺めたり、真横を鏡でうつしたりした。でも、僕の顔はこんなだっけと不思議な思いに囚われる。いつの間にかできた皺かなと思ったり、前髪が少し後退した髪を見たりした。 それでも、僕は納得できずに、台所で大根を切っている舞に聞く。 ねえ。僕の顔、変じゃない? 舞は大根を切るのをやめ、背中越しだった顔を、僕の顔に近づける。 「うーん。貴方の顔だと思うけど」 僕がその言葉にがっかりしていると、 「でも確かに違うような……」 と舞は言った。
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