Bさんの場合

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Bさんの場合

 送信を押したはいいものの、ものすごく緊張して画面から目を逸らした。  文面を考える内に日付が変わっていて、それだけ悩んだにもかかわらず送った文面は短かった。 『あの日の約束、覚えてる?』  メッセージを送ったのは当時隣に住んでいたお兄さん。 2歳年上の彼は幼い頃から私を可愛がってくれて、その笑顔は幼い私に『好き』という感情を教えてくれた。  あの頃『大きくなったら結婚しようね』と約束したけど、きっともう忘れられていると思う。  だけど自分にとっては忘れられないくらい、好きだった。  学生の時は少し、お互いを意識しているな、と思う瞬間があった。 ふとした時に逸らす目。 不自然な愛想や逆に不自然な仏頂面。 お互いがお互いを意識しすぎて、手書きの『こんいんとどけ』を作った純粋な頃のようには接することが出来なくなった。  彼が就職して、実家から出る時もなにも言えなかった。 このまま美しい思い出になるのだ。 そう自分に言い聞かせた。  だけどふと見つけた、彼のSNSアカウント。 フォローをしたらフォローが返ってきた。 あの時は飛び上がるほど嬉しかったけど、それ以降なんの進展もなく、特に呟かない彼のアカウントの写真を眺めては、綺麗な海だなあと思うだけに留めた。  実家の近くで撮影されたであろうその海の写真を、何度も見てしまう。  嫌われたくないから、距離をとっていた。 別の彼と付き合っても、やっぱり忘れられない初恋の人。 思い浮かべる度に甘い疼きが胸を締め付ける。
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