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Bさんの場合
ひとしきり泣いた後、明日の死に方について考えた。
どうせ死ぬなら幸せに死にたい。
心残りを残したくない。
私は1人、この部屋で死ぬ自分を思い浮かべてゾッとした。
そんな寂しい終わり方ってない。
大学の友人の顔が何人も浮かんだけどすぐに消えた。
スマホに通知がたくさんきていた。
1件1件見ていくと、混乱ぶりが窺えた。
『いっしょに死なない?』といくつかメッセージが来ていたが、
何度か顔を合わせた程度の人達と一緒に死ぬくらいなら、
1人で死にたい。
あからさまに『ヤらない?』とか『最後に1回だけ』とかいうどうしようもない誘いが来ていたりしてうんざりした。
返信はもちろんしなかった。
だけど。
本当は1人、最後を一緒に過ごしたい人がいる。
その人の顔を思い浮かべてスマホに連絡先を表示して、怖気付いた。
あの日の約束なんて、忘れているだろうなと思ったからだ。
他の彼女と最後を過ごす事を知って1人で死ぬのと、
何も知らずに1人で死ぬのはどちらが幸せだろうと考えた。
死に方なんて考えたところで、どうせ死ぬのに。
自分が少し愚かに感じてちょっと笑えた。
最後の最後まで小さな事にばかり悩む自分。
馬鹿だなあと思った。
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