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時代が移り変わり。人々の文明が発展すると同時に、多くの問題が起きるようになっていきました。
人々は街を発展させるために、工場から汚れた水や空気を出して、どんどん森や川を汚くしていってしまいます。
さらに多くの資源や考え方を巡って、発明した兵器を使い、戦争を起こすようになっていきました。
女神様は嘆き悲しみながらも、汚れた森や川を綺麗にすることしかできません。戦争を起こす人の心を変えることはできませんし、何より必ずしも醜い心が争いを産むわけではないことを知っていたからです。誰かを愛する気持ち、誰かを守りたい気持ち、時にそんな美しい気持ちが争いになってしまうことを、女神様は誰より理解していたのでした。そう、まさに夫の神様が言ったように。
やがて、女神様がどんなに頑張って綺麗にしても、森や川の汚染は止めることができなくなり――人々の間に恐ろしい病が流行するようになってしまいます。
それは、人々の顔を、まるで泥のように真っ黒に溶かしてしまう病気でした。汚染された空気や水が、住んでいる人々をついに蝕み始めたのです。
『彼らを救わなければ』
女神様は言います。
『彼らの死は、運命として定められたもの。私にはどうすることもできません。しかし、彼らの美しさを救い、彼らが少しでも幸せに寿命を終えることができるように魔法をかけることならできます。容姿が醜く崩れてしまえば、それだけで人々は思い悩み、苦しみ、新たな差別を産むことになってしまう。美しい人の心さえも醜く染まってしまうような病を、けして許すことはできません』
『やめるんだ、お前。彼らの病は、いわば人々の自業自得。何より、病人の数は山ほど存在する。その全員を治療しようとすれば、君の魔法の力だけではとても足らない。君自身の“幸せ”を削らなければいけなくなるぞ』
夫の神様は止めましたが、女神様は聞きませんでした。
自分の幸せを削ることで、人々を救うことができるのならば。それこそが自分が生まれてきた意味に違いないと、そう信じていたためです。
女神様は、病の人々一人一人に魔法をかけ、崩れた顔を元通りにしていきました。神様が言った通り、女神様の普段の力だけでは、とてもとても全員を救うことはできません。女神様は自分の“幸せ”を削って人々を助け続けました。つまり、自分自身の美しさを削り取って、人々に与えていったのです。
誰よりも美しかった女神様の顔は、どんどん真っ黒なシミだらけになり、病気の人々のようにどろどろに溶けていってしまいました。
以前は女神様を褒め称えていた人々も、そんな女神様が現れると恐怖に悲鳴を上げ、時には逃げていきました。それでも女神様は、人々を救うことをやめなかったのです。
どれほど自分が嫌われても、恐ろしい怪物のような顔になってしまっても、それで誰かが救われるなら、それが自分の幸せになるはずであると信じて。
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