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女神様の頑張りもあり、地上の病人達の数は減り、やがて病は時間をかけて根絶されることになりました。
しかし、女神様の恐ろしい顔は、人々から病がなくなっても元に戻ることがありません。女神様は人々が救われたことに安堵しつつも、自分の見た目をみんなが怖がることを知っているため、ほとんどの時間を神様の家で引きこもるようになってしまっていました。
夫の神様は、そんな妻の様子が悲しくて仕方ありません。どれほど恐ろしい見た目になっても、彼女は自分が愛した妻であることに違いはないからです。
神様は、ある決意をしました。地上に降り立ち、人々に今までのことを告白し、お願いしたのです。
『力を貸して欲しい、皆の者よ。君達の幸せを、ほんのひとかけらずつでいい。私の愛する妻に分け与えてくれないだろうか』
一人一人が渡せる幸せのパワーは、本当に僅かなものです。
しかし多くの人々がより集まれば、とても大きな力になることを神様は知っていました。
人々は自分達を救ってくれた女神様のことを知り、一部の人々は恐ろしいと石を投げてしまった存在が女神様であったことを理解し、酷く心を痛めました。
神様は人々からもらった幸せの欠片を運び、女神様がいる部屋へと雨のように降らせていきます。
そして、そんなある日のことです。
『どうしたのかしら……私、少しだけど……最近、キレイになった?』
女神様は鏡の前で、自分の顔を見て驚きます。頬の一部から黒いシミが消え、美しい元の肌に戻りつつあることに気がついたからでした。
ゆっくりと時間をかけて、女神様の顔は少しずつ元に戻り、元の美しい顔を取り戻して行きます。
やがて女神様は、自分の顔が元通りになったことに気づき――大喜びで、夫の神様のところへ飛び出していきました。
『あなた!不思議なことが起きたんです。あれだけ恐ろしかった私の顔が、元通りになったのです。どうしてなのでしょう。何が起きたのでしょう』
女神様は、神様が人々から集めた幸せの欠片を降らせていたことに気づいていませんでした。神様は喜ぶ女神様を抱きしめて、涙を流して告げます。
『それは、お前の心が、どれほど怪物のようになっても美しいままであったから起きた奇跡だ。ああ、これからもどうか、その美しい笑顔を私に見せておくれ』
女神様と神様と、世界の人々は。
それからも末永く幸せに暮らしたとのことです。
めでたし、めでたし。
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