夕焼けと、向日葵と。

1/1
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ

夕焼けと、向日葵と。

[朗読台本] *文字数:825文字(約3分) *性別:不問 *演者人数:1 人 *演者役柄:ある日の不思議な出来事に思いを馳せる *場所:夕暮れの帰り道 ✿陸奥様の 「ちょっぴり切ないけど、どこか暖かい話」という企画に書きました。 ──ここから本文── 私は、いつものように家を出る 家の前の坂を下った右側に 通い慣れた駅がある 電車から外の景色をみていたら あっ!向日葵! 私は数日前に起こった 不思議な出来事を思い出していた ───ここから夢?空想?─── それは ある夕暮れの帰り道 いつものように家に向かい 坂を上がっていると 眩しいくらいの夕焼けに 立ち止まり目を閉じた 暫くして目を開けると 大きな向日葵柄の 半袖のワンピースを着た女性が 私の目の前に立っていた なんて笑顔の素敵な女性なんだろう? どこかで会っているのか? 懐かしいとすら感じるのは何故だろう? 肌寒い季節に彼女は半袖で 寒くないのだろうか? 色々な事を頭の中で思い巡らせてみた そんな私に彼女は話しかけてきた 彼女との話は どこか懐かしく楽しかった そうしながら数分? いや何時間か話しただろうか? また眩しい夕焼けに目を閉じ開けてみたら 彼女は目の前から居なくなっていた 今の時間はなんだったんだろう 見回しても誰も居なく さほど時間も経っていないようだった モヤモヤしたが夢でも見たのだろうと 私は家路についた ───夢?空想?終わり─── 今、電車の中から あの向日葵柄を見たような気がしたけど 気のせいだったようだ 忙しい毎日が過ぎていく中で 彼女の事を忘れたけていた頃 家族と昔の写真を見ていたら 見覚えのある向日葵が あの時のワンピースの柄だ その写真に写る女性は 幼い頃亡くなった母だった きっと会いにきてくれたのだろう どことなく懐かしく感じたのは そのせいだったのかもしれない ふいに最後に聞いた言葉を思い出した 「しっかり自分の足で歩いているね。 安心したよ。」 私は胸があたたかくなった それからは夕暮れの帰り道で 何処を見るわけでもなく 「ただいま」と口にするのが日課になった さぁ今日も帰ろう 夕暮れの坂道を上がり ぼんやり灯る 明かりの見える 大切な人が待つ我が家へ おしまい ★陸奥様にプレゼント ★陸奥様の了承の上配信サイトへ投稿 53a3efcd-666e-4f3d-88f5-152f455d6fde
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!