8人が本棚に入れています
本棚に追加
/89ページ
夕焼けと、向日葵と。
[朗読台本]
*文字数:825文字(約3分)
*性別:不問
*演者人数:1 人
*演者役柄:ある日の不思議な出来事に思いを馳せる
*場所:夕暮れの帰り道
✿陸奥様の
「ちょっぴり切ないけど、どこか暖かい話」という企画に書きました。
──ここから本文──
私は、いつものように家を出る
家の前の坂を下った右側に
通い慣れた駅がある
電車から外の景色をみていたら
あっ!向日葵!
私は数日前に起こった
不思議な出来事を思い出していた
───ここから夢?空想?───
それは
ある夕暮れの帰り道
いつものように家に向かい
坂を上がっていると
眩しいくらいの夕焼けに
立ち止まり目を閉じた
暫くして目を開けると
大きな向日葵柄の
半袖のワンピースを着た女性が
私の目の前に立っていた
なんて笑顔の素敵な女性なんだろう?
どこかで会っているのか?
懐かしいとすら感じるのは何故だろう?
肌寒い季節に彼女は半袖で
寒くないのだろうか?
色々な事を頭の中で思い巡らせてみた
そんな私に彼女は話しかけてきた
彼女との話は
どこか懐かしく楽しかった
そうしながら数分?
いや何時間か話しただろうか?
また眩しい夕焼けに目を閉じ開けてみたら
彼女は目の前から居なくなっていた
今の時間はなんだったんだろう
見回しても誰も居なく
さほど時間も経っていないようだった
モヤモヤしたが夢でも見たのだろうと
私は家路についた
───夢?空想?終わり───
今、電車の中から
あの向日葵柄を見たような気がしたけど
気のせいだったようだ
忙しい毎日が過ぎていく中で
彼女の事を忘れたけていた頃
家族と昔の写真を見ていたら
見覚えのある向日葵が
あの時のワンピースの柄だ
その写真に写る女性は
幼い頃亡くなった母だった
きっと会いにきてくれたのだろう
どことなく懐かしく感じたのは
そのせいだったのかもしれない
ふいに最後に聞いた言葉を思い出した
「しっかり自分の足で歩いているね。
安心したよ。」
私は胸があたたかくなった
それからは夕暮れの帰り道で
何処を見るわけでもなく
「ただいま」と口にするのが日課になった
さぁ今日も帰ろう
夕暮れの坂道を上がり
ぼんやり灯る
明かりの見える
大切な人が待つ我が家へ
おしまい
★陸奥様にプレゼント
★陸奥様の了承の上配信サイトへ投稿
最初のコメントを投稿しよう!