2.転校生

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2.転校生

12年前の秋ーーーー 黄金色(こがねいろ)の空にたなびく薄い千切れ雲を   夕陽が染めたその空の下に 一本だけ長く伸びた   田舎の砂利道を歩く女の子を偶然見かけた。 転校生の市村秋。肩下までの黒髪が秋の風になびいていた。 「今日からこのクラスに転校する市村秋さんです」 そう担任の岡部先生に紹介されたその女の子は、     このド田舎の街には到底      似つかわしくない洗練された      都会の雰囲気を全身に漂わせ、 「市村秋です。よろしくお願いします。勉強よりスポーツの方が得意です」 ときちんとお辞儀すると   たまたま空いていた僕の隣の席に座ると    テレビでしか見たことのない     アイドルのような笑顔を僕に向けた。 ただただ僕は君に見惚れていただけで、ペコっと頭を下げるのが精一杯だった。
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