2.転校生

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顔を上げるとその場に彼女の姿はなく   僕だけが自転車のそばで    足元の砂利道を無意識に見つめていた。 余りに慣れない初めての体験が    僕を異世界の中へ引き摺り込んでいく。   それに身を任せる以外に方法がなかった。 そのことに気付いたのは   スマホからラインの着信音が    聞こえてきた時だつた。 学生服のポケットから    スマホを出してラインを開くと   今日、学校で交換したばかりの     「市村 秋」って名前が    (ほの)かに画面の上で浮かんで見えた。 〈今日はタケくんに会えてよかった) 〈じゃおやすみ〉 〈また明日〉 返事を返すのも忘れて、その画面をずっと見てた。それに僕を呼ぶ呼び名も「神尾くん」から「タケくん」に変わってた。 《また明日》 ただそれだけの返事を返すだけで    夜中近くまでかかった。
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