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顔を上げるとその場に彼女の姿はなく
僕だけが自転車のそばで
足元の砂利道を無意識に見つめていた。
余りに慣れない初めての体験が
僕を異世界の中へ引き摺り込んでいく。
それに身を任せる以外に方法がなかった。
そのことに気付いたのは
スマホからラインの着信音が
聞こえてきた時だつた。
学生服のポケットから
スマホを出してラインを開くと
今日、学校で交換したばかりの
「市村 秋」って名前が
仄かに画面の上で浮かんで見えた。
〈今日はタケくんに会えてよかった)
〈じゃおやすみ〉
〈また明日〉
返事を返すのも忘れて、その画面をずっと見てた。それに僕を呼ぶ呼び名も「神尾くん」から「タケくん」に変わってた。
《また明日》
ただそれだけの返事を返すだけで
夜中近くまでかかった。
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