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1.プロローグ
人の生き死には
悲しいほど赤く熟れていく夕陽の如く、
そして儚く流れていく秋空の千切れ雲の如く
永遠を感じさせるものが
あるものだとーーーー
何かの本で読んだ記憶がある。
「ねえ、オミ君!」
何処かで懐かしい声がした。
「オミ君!起きて!会社遅刻するよ!」
それは別れて2週間になるキミ、市村秋の声。
その声にはっとなって目を覚ます。
ーーまだ4時か…
秋の夜長、最近ずっと同じ夢を見て
同じ時間に目を覚ます。
君に別れを告げられて、
あの日、君は東京へ帰って行ったーーーー
あれは今から2週間前の秋の空が
二人を見送る、そんな気がする日だった。
最後に君を地元のバス停で見送ってから一週間後、
僕がずっと欲しがってた高級な万年筆が
別れたはずの君から僕宛に
宅急便で送られてきた。
今でも使ってる。そして性懲りもなく
そのペンでこの小説を書いてるんだ。
笑うかい?女々しいって。
「この写真もらっていい?」
僕がそう聞くと微笑みながら「いいよ」って
僕を見たキミ。
画像は作者のイメージです。
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