何も知らない十八年

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何も知らない十八年

 あの日は丁度ふたご座流星群で、空には数えきれないほど多くの流れ星が見えたことを覚えている。 「僕と結婚してください!」 「大人になってまた会えたらね」  流れ星を見るとふと思いだす。  もう十八年も前の話。俺は五歳にして一目惚れをした。あの子に見合う男になるために身体を鍛え、勉強もして、人助けもして、いい会社にも入社した。告白もすべて断っている。顔も名前もわからないのに。 ―――――また会いたい。  十二月十日、今日はふたご座流星群だ。天候条件はとても良く、十八年ぶりに観測数が更新されると専門家から言われている。  俺はここ数年見ると悲しくなるから極力見ないようにしていたが、何かに呼ばれた気がしてベランダに出た。  するとそこには、数えきれないほど多くの流れ星が見えた、”あの日”と同じように。 「綺麗だ」 「そうですね」  そう話しかけてきたのは顔も名前もわからない、最近引っ越してきたお隣さんだった。 「俺と結婚してください」 「大人になってまた会えましたね」
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