はじまりの時

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桜が散り、春が過ぎた。ゴールデンウィークも明け、五月病もそろそろ終わりかなと思える頃。 私は大学二年生の清水美織。丁度、二十歳になったばかりだ。 大学に入ってから一年が過ぎ、そろそろ大学生活にも慣れてきた。 バイトも大学の近くにあるピザ屋でしている。 先輩たちも楽しくて親切な人ばかりだ。 とっても充実している青春、真っ只中!と言いたいところだけど、何か物足りない。 物足りない・・・? と言うか、なんだか空虚だ。空虚なんて言葉を使うと大袈裟に聞こえるかもしれないが、本当にそうだから仕方ない。 でも、これは今に始まったことじゃない。そう、今に始まったことじゃないんだ。 幼い頃から、私は雨が好きだった。 でも、周りの大人や友達は、いつも雨を嫌がっていた。 確かに、外に出ると濡れるし湿気も多くジメジメとする。 大人たちは、忙しい日々に追われ、急な雨など降ってこられた日には、洗濯物が乾かず、とんだ迷惑だ。 それでもやっぱり、私は雨が好きだった。 なぜかわからないけど、あの音を聞いていると不思議と心が落ち着いた。 そして、同時に寂しくもあり、哀しくもあり、切なく愛しくもあった。 涙がこぼれる日もあった。 まるで誰かに、とてつもなく会いたいように。そう感じる時もあった。
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