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♯1.男はエネルギー源だが、見る目を養え。
「恋は身を滅ぼす、この物語で言いたいのはねぇ、深緋。そういうことなんだよ?」
子供の頃から幾度も開いた童話を見ては、ため息をついてしまう。
うっかり恋に興味があるともらしたせいで、朝食後の忙しい時間帯に私は童話の読み聞かせをされる羽目になった。
「それは分かったけどさぁ、おばあちゃん」
「誰がおばあちゃんだ?」
「ごめんなさい、リリーさん」
悪びれなくペロッと舌を出すと、リリーさん、こと、私のおばあちゃんはヨシと頷いてから続きを促した。
「恋をするとしても、要は片思いで済んだら良いだけの話じゃないの?」
「……はぁ?」
「だって。その女の子は好きな人と結ばれたから悲しくなったんでしょ?
それに恋に落ちた相手の血は、びっくりするほど甘くて美味しいって聞いたし。やっぱり興味があるよ」
「………」
「私、一度でいいからそんなハニーブラッドを味わってみたいの。そこにどんなトキメキがあるのか……想像するだけでワクワクするの」
「ちょっと待て、深緋」
「なに?」
「恋した相手の血が美味しいなんて、一体誰から聞いた?」
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